友達
「苗字!!」
「おはよう、影山く」
「勉強教えてくれ!!!」
「…………え?」
どかっ、と隣の席に腰を下ろした影山くんに首を傾げる。
理由を聞くと、期末テストで赤点補習を受けると東京遠征に行けないんだとか。
「それは……大変だね。」
「あぁ、だから教えてくれ!!頼む!!」
「わ、わかった、でも私そんなに頭良くないけど。」
「赤点は取らねぇだろ?」
「それは……まぁ……。」
赤点というのは40点以下だと言うことはご存知なのだろうか。
100点満点のテストで40点以下と言うのは……中々……やばいのでは……。
「いつなら教えてくれる?」
「うーん、お昼とか?朝は影山くん朝練あるもんね。」
夕方も部活あるし、彼は多忙な人だ。
「じゃあ昼な、よろしく頼む。」
「うん、わかった。」
◇
「…………で、ここがこうなるの。おっけー?」
「………………うぬん。」
「え?どういう感情?」
うぬんって何?鳴き声??
「うぉ!?か、影山が勉強してる……!?」
「!?」
にゅ、と影山くんと私の間から人が出てきて、驚き固まる。
「あ?お前何しに来たんだ。」
「昼休みも月島に勉強教わろうと思って、お前も誘いに来た!!……のに、何お前教わってんだよ!?」
「別にいいだろ、自分で頼んだんだし。」
「いや、いいけど…………って、ごめんね!?急に入ってきて!!」
影山くんが、人とお話してる……。
その事実に驚いていると、彼はこちらを振り返り申し訳なさそうな顔で謝った。
「い、いえいえ。……影山くんの友達?」
「違ぇ。」
「あ、違うんだ。」
「同じ部活なんだ!!俺1組の日向翔陽!君は?」
日向くんは人懐っこい笑みを浮かべて聞いてきた。うーん、なんとも影山くんとは正反対な人物。コミュニケーション能力高そう……。
「苗字名前です。」
「苗字さんか!苗字さんは影山の友達?」
「友達……。」
と言って良いのかなんなのか、勝手にそうです。と言って、は?と言う顔されたら立ち直れる気がしない。
恐る恐る影山くんの方を見ると、彼は首を傾げて
「友達だろ?」
当たり前かのように言ったのが、心底嬉しくて、
「……うん!!そう!友達!!」
そう笑って言って見せた。日向くんに負けずとも劣らない良い笑顔が出来た気がする。