神様からのギフト

「…………苗字?」


その声に、聞き覚えのある声に、何度も何度も聞いた声に驚いて零れている涙もそのままに声の方を振り向いた。


するとそこには、懐かしくて暖かくて幸せだった日々の面影を残して、しかしながら大人になり成長していた、


「……影山くん。」


何度も思い出して救ってくれた彼がいた。


「……おう。久しぶり……ってお前なんで泣いてんだよ。」


「え、あ……これは……。」


なんて言おう。いやもう何を言っても酷すぎる話だ、人に話して良いようなレベルの話じゃない。修羅場かよって。


でもなんでもありません、と言うとそれはそれで嘘になるし。なんて悩んでいると


「……っふふ、ははははは!!ひっでぇ顔だな。」


そんな風に笑い飛ばされ、あの頃と変わらないリアクションを取った彼に、懐かしくて、それでもって先程まで味わっていた孤独感や絶望を消し去ってくれた気さえして、


「………かげやまぐぅん……。」


ぼろぼろと涙は更に加速して零れた。


「え、ちょ、うわ!?ど、どうしたんだよお前ホントに。」


「うわあぁ…………酷いんだよ、影山くぅぅん……。」


「……あぁもう、泣くなよ。」


そう言って影山くんは、高校生の時のように大泣きする私をあやすように優しく抱き締めた。





「落ち着いたか?」


「……すいません、再会早々に大泣きして。」


「ホントにな。俺が泣かせたみたいだから辞めろよ。」


「すいません……!!」


「で?何があったんだよ。」


「…………………………。」


え?話していいのかなこれ。再会早々話すようなレベルの話じゃ無いと思われるんだが……?


めちゃめちゃヘビー過ぎない?急に高校時代の親友が二股かけられてフラれた話とか重くない!?


「えっとー…………。」


「なんだよ。」


「実は結構ヘビーな事があって……再会早々話すような事でも」


「あ???」


「こっっっわい!!!」


高校時代より遥かにドスの効いた声にビビり上がる。こっっわいよ!?コミュニケーション能力が相変わらず残念なのはテレビや試合の中継とか見て知ってるけど!!これは怖過ぎない!?


「いいから話せ、じゃねぇと助けられるもんも助けられねぇだろ。」


「…………え?」


「……なんだよ。」


「…………ううん、影山くんは変わらないね。」


「は?」


変わらず優しい……!!私がただ泣いててそれをすぐにどうにか助けてあげられないか、って考えてくれるなんて本当に優しい。優しさが染みる……。


「で、何があったんだよ。」


「…………あのね、」


それから影山くんと離れてからの私の話をした。結論から言うと彼氏に二股かけられてフラれたよ、でも私も好きになってあげられなくて悪かったよ、という話。


「………………って事がありまして……急にホームレス……的な……?あは……?」


「…………やべぇなお前。」


「ちょ!!辞めて!!」


「想像以上にヘビーな話だった。」


「いやだからそれを話そうか悩んだんじゃん!!」


「よくお前俺に話せたな。」


「やめてよおおおお!!!」


私が悩んだ意味!!!聞くだけ聞いて引かないでよ!!


「……ははははは!!嘘だよ、話してくれてありがとな。」


そう言ってぽんぽんと頭を撫でる影山くんはあの頃から何も変わらず優しくて、私だけが黒く汚れて醜い人間になってしまったような気がした。


「とにかく私は今家探しに奔走しなければならなくてだね……。」


「うち来るか?」


ん?


「ん?」


「うち部屋余ってんだよ。お前みたいな小人1人ぐらい生活できると思う。」


「小人って!!」


「別に間違ってねぇだろ。苗字身長変わってねぇし。」


「影山くんは…………え?また大きくなってる?」


「おう。高3の時からまた伸びてる。」


「まじか…………もう親子じゃん……。」


「だからカルシウム取っとけって言っただろ。」


「すいません…………じゃなくて!!そんな簡単に家に人入れちゃダメだよ影山くん!?」


「別に知らない人じゃねぇし。……苗字なら信用出来るし。」


「いや、それは嬉しいけど……。」


若い男女が同じ屋根の下…………よくない、あまりよくない。


「別に家が見つかるまでで良いんだし、俺が良いって言ってんだ。…………それともなんだ?ホテル生活でもしたかったのか?」


「うぐっ…………。」


「金の無駄だろ、苗字がどうしても嫌って言うなら無理強いしねぇけど。…………だからってこんな所に置いてくなんて出来ねぇよ。」


困ったように眉を下げた影山くんの優しさに胸がグサグサと刺される、……そうだよね、友達が困ってたら助けたくなるよね……でも、いいのかな……迷惑じゃないかな……。


「言っとくけどあの頃からあんまり俺変わってねぇからな。」


「え?」


「嫌なもんは嫌って言う。」


キリッとそんな事を言う影山くんに、それは大人としてどうなの。と思いながら笑った。


それは彼なりに気を使ってくれたと言うこと。私が頷きやすいように考えて話してくれてる。


「…………ありがとう、影山くん。」


「ん。」


「……お邪魔しても良いですか?」


「ん。じゃあ行くぞ。」


「あ、ちょ、それ私の荷物!!」


「俺が持った方が速い。」


「いやそれはそうかもだけど…………って歩くの速っ!?」


「悪いな、足が長くて。」


「む、ムカつく…………!!」


街の灯りだけが明るい中、私達は声を上げて笑いながら並び歩いた。

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