動き出す
「何を、交換するんだ。」
「びびび、びっくりした!?」
「そ、そうだぞお前!!せめて声かけろよ!!」
「すいません、……いても立ってもいられなくて。」
え?なんで??
「…………連絡先をだよ、今話してて仲良くなったんだよなぁ、な?苗字ちゃん。」
「あ、はい!!だから連絡先交換しようってなったんだよ。」
「…………そっすか。」
あれ?全然納得してない?
む、と突き出された唇はそのままでいかにも納得してません。と言う顔をしてる影山くん。
「どうしたの?」
「……何が。」
「なんか、機嫌悪い。」
「別に。…………ほら、早く帰るぞ。腹減った。」
「あ、あぁ、ちょっと待って!黒尾さん、連絡先、」
「………………いんや?また今度でいーよ。」
「え?」
「今度影山も含めて皆で飯でも行こう、その時にでも交換しよう。」
いいよな?影山選手。そう声を掛けられた影山くんは、不服そうな表情を浮かべたまま…………っす。と頷いた。
「じゃあ帰るぞ、黒尾さんお疲れっした。」
「はいよ、お疲れ!」
「ちょ、か、影山くん!?」
ぐいぐいと腕を引かれて会場を引きずられるようにして出る。
「い、いたたた!!?も、もげる!!腕もげるから!!」
あまりに強い力で引かれるので腕がもげそうになる。
い、いくらイケメンだからって腕もいでも許される訳じゃないんだからね!!?
◇
「どうだった、試合。」
「とんでもなかった!!!」
「っふふ、何がだよ。」
「なんか、……影山くんが影山くんじゃないみたいで!!」
「なんだそりゃ。」
そう言いながら勝利のカレーを口に運ぶ影山くんもかっこいい、凄いなイケメンは。何してても顔が良い。
「なんか…………テレビとかで試合見ることもあったけど、そんな遠くからじゃなくてさ、すっごい近くで見せてもらって、…………。」
「うん?」
すっごい近くで見せてもらって、かっこよすぎてくらくらしました。……なんて言ったら流石に引かれるかな。
「なんだよ。」
「うー、えっと……。」
それに、なんだか小っ恥ずかしい。かっこよかったよ!なんていつもだったら勢いで言えそうなのに、なんかあの色気たっぷりな表情を思い出してしまって顔に熱が集まる。
「……?おい、顔赤いぞ。」
「えっ!?!?な、なんでだろー……あはははは!!」
「?……んで、なんだよ。」
「…………えっとー……」
どこまでも追求してくる影山くんに、嘘なんて通用するとも思えないので
「…………すっごい、かっこよかった。」
……デス。と付け加えて俯く。か、顔なんて見れないし自分の顔も見せられない。な、なにこれ!?恥ずかし!?!?
暫くしても何も言わない影山くんに恐る恐る顔をあげると、
「…………………………。」
ぽかん、と言った様子でこちらを見ている影山くん。しかしながら頬はほんのりと赤く色づいていて、少してれて
「て、照れてねぇ!!!!」
「えぇ!?」
な、何故わかった。エスパーか!?!?
「おお、お前にやついてる、絶対照れてるって思っただろ。」
ふん!!と照れながらどもりながらも勝ち誇ったような笑みを浮かべる影山くんに、その顔を晒してしまってたら意味無いよなぁ。と笑ってしまう。
「……その、ありがとう。」
「うん?何が?」
「……見に来てくれて。あと、……かっこよかったって。」
やっぱり照れてるじゃん、と言いたくなるほど真っ赤になった顔でそんな事をもじもじと言う影山くんは、ただただ可愛い。
「全然!こちらこそ良い試合をありがとう。でもかっこいいなんて言われ慣れてるでしょ?」
ファンにも、メディアからも言われてるだろうに、今でもこんなに照れるなんてピュアなのか人の話を聞いてないのか。
「…………お前に言われんのと、他人に言われんの。全然違うだろ。」
む、と唇を突き出しながら不服そうな顔をする影山くんに対して、
そんな言葉、私には勿体ない。と思いながらも彼との高校生時代の日々を思い出すと、そんな事を言うのは私らしくも無いなぁ、なんて思って
「そうだね!!なんてったって私は影山くんの親友だからね!!」
そう声高らかに笑った。
自分が放った言葉に少しの違和感を感じながら。