気づいて見せろ

「坂ノ下の肉まん、美味しかったよねぇ。」


「俺はカレーまんの方が好きだった。」


「確かに、そうだったね!!」


「…………急にそんな話、どうしたんだよ。」


「いやぁ、影山くんといるとやっぱり高校生の時の事よく思い出すなぁと思って。」


何度も一緒に行った坂ノ下。学校帰りに影山くんが部活無かったらよく一緒に行ってた。


「あぁ……よく肉まんとカレーまん1つずつ買って、」


「それを半分こして肉まん半分とカレーまん半分食べてたよねぇ!!懐かしい!」


今考えても、ほんと仲良すぎんか?私達。


どちらも食べたい!!と言う私に2つ食べれば良いじゃねぇか。なんて言った影山くんに、そんなに食べたら夜ご飯食べれなくなっちゃうよ。と言ったら、


じゃあ。と1つずつ買って半分に割ってくれたんだよなぁ。


たまにそれは片方が大きくなっちゃったりして、そうなった時はじゃんけんして買った方が大きい方を食べてた。


「…………ふふっ。」


「何笑ってんだ、キモいぞ。」


「酷い!!ストレート過ぎるよ!!」


「今更だろ。……何笑ってたんだ。」


「ふふっ、高校生の時にお互い食い意地張って。なんとしてでも大きく割れた方を食べたくて必死だったなぁと。」


「あの時のお前可愛げ無さすぎたな。」


「いや!?!?影山くんもでしょ!?」


「こいつ小せぇ割には食べるよな、って思ってた。」


「言ってよ!!!こんな数年越しに言うぐらいならその時に言ってよ!!!」


ダメージ倍増だよ!!?


「あはははは!!……そんな、キレんなよ。」


なんて目尻に涙を浮かべるほどに笑われて、キレないでいられるものか。


「ムカつく!!詫びとして肉まん奢ってよ!!」


「いいぞ。」


「………………今となってはこれは嫌がらせにならないのね。」


高校生の時だったら、は?俺は悪くない。なんて言って中々財布を出してくれなかったのに。


「いくらでも買ってやるよ。」


「ムカつく……。」


「悪いな、今金には困ってねぇんだ。」


「ムカつくううう!!!」


「あはははは!!」





「コンビニの肉まんってこんなに美味しいんだって知ったの、高校卒業してからだった!」


「確かにな、それまで坂ノ下でばっかり食べてたしな。」


「ね、それに坂ノ下の方が安かったし!」


なんて言いながらいつかのように、肉まんとカレーまんを半分こしながらはふはふと食べた。


「なぁ、ちょっと散歩していかねぇか。」


「いいね!肉まん食べて体温まったし!」


「ん。」


とりあえず宛もなく2人でふらふらと歩き始める。ショッピングモールのように人混みでなければ影山くんもそんなに目立たなくて有難い。


「………元彼のこと、もう大丈夫か?」


「……え?」


「……その、最初会った時はだいぶ引きずってたから。」


「……うん、もう大丈夫だよ。ありがとう。影山くんがいてくれて本当に良かった。」


そう笑いかける。


本当に、良かった。彼とのことは悲しい終わりを迎えてしまったがちゃんと思い出に出来た気がする。


それに彼じゃなくても、私のことを大事に思ってくれる人はいるんだって影山くんは証明してくれた。


それが例え友情であったとしても、孤独感に苦しんでいた私を救ってくれたのは紛れもない事実。


「なら良かった。」


「うん、だから影山くんも彼女とか作ってくれても良いからね?」


「は?」


「え?……もう私は大丈夫だから、いつ追い出してくれても大丈夫だから!ちゃんとその後も友達として仲良くはしていきたいけど……。」


なんて続けると余計に寄った眉間のシワ。え?


「………………まだ、言わねぇ。」


「えっ?」


「まだ言わねぇけど、ひとつ言っておく。お前は高校生の頃から俺について知らないことが一つだけある。」


「…………え!?」


「俺の好きな人。ずっと好きな人。」


「だ、だって聞いても教えてくれないじゃん!!」


「当ててみろ、それ以外お前に話してないことなんか無い。」


「えぇ!?」


なんと言う無理難題。難しすぎやしないか!?


「俺の親友だと名乗るのなら、当ててみろよ。」


なんて言って挑戦的な笑みを浮かべた影山くんでさえ、かっこよく見えてしまうのはなんだか既に負けたような気がした。

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