なんという

「……………………!!?!??!???」


「うわっ!?どうしたの苗字さん!?」


思わず自分のデスクから立ち上がってしまう。お弁当までひっくり返さなくて良かった……。


じゃなくて!!!!


周囲の人に謝りながら席に座り直し、震える手でもう一度ネット記事を見る。


『男子バレーボール 影山選手に熱愛!?』


何度読んでも同じだ…………。


という事は。添付されている写真を見ると……。





『影山ぐうううううん!!!!』


「うわ、なんだよ!?うるせぇな。」


珍しく日中にかかってきた電話に出ると騒がしい苗字。


『にゅ、ニュース!!!』


「……あぁ、あれか。気にするな否定はしてあるそのうち消えるだろ。」


『ああああ、あれって私だよね!?しゃ、写真の!!!』


「まぁそうだな。同じ家に帰る様子、とか書いてあったし見た目もお前っぽかったけ」


『うわあああ!!?どうしよう!!ごめんなさい!!す、すぐ出ていきます!!』


「っはぁ!?ちょ、何言ってんだお前。急にホームレスにでもなるつもりか」


『今すぐ不動産屋さん行ってくる!!!』


「おい!!!待て!!!」


聞こえるのはツー、ツー。と言う通話の切れた音。


あいつ…………!!!


幸い練習が午前までだった俺は、急いで帰る準備を進めて練習所を飛び出した。




ななな、なんということを………………。


影山くんの家にお邪魔するだけで物凄くお世話になっているのに、ニュースになんて取り上げられてしまって、なんと言うご迷惑を……!!!


しかも少なくとも報道では彼女だと推測していて、私みたいなちんちくりんが影山くんの彼女な訳ないだろう!?なんて言葉は叫ぶことすら出来ない。


これ以上影山くんのご迷惑になる前に家を出なくては。今回が良くてもまたいつこんな誤報が流れるかわからないし!!


そう思い立った私は影山くんに電話し、半日有休を取って家へと急いだ。


のだが。


「………………か、影山くん。今私は非常に急いでおりまして……。」


「奇遇だな、俺もだ。」


なんて言っていつも息1つ乱さない影山くんが、少しばかり息を弾ませながら、そして額にはじんわりと汗をかきながら玄関に立ちはだかった。


な、なんでそもそも家にいるんだこの人!?


「……ふ、不動産屋さんって意外と早く閉まっちゃうから、」


「行かなくて良い。」


「え?」


「行くな、苗字。この家にいろ。」


きゅん、なんて言って胸に刺さったが、相手は大体何言ったって様になるイケメンだ。挫けるな私!!


「い、嫌!!もうこれ以上ご迷惑になる訳には!!」


「……嫌とか言うな。迷惑じゃねぇし、いなくなられる方が迷惑。」


「でも、影山くんが私みたいなのと付き合ってるって誤報されてた。次いつこんな事言われるかわからないよ、同じ家に帰ってるんだもん。」


「そんなの気にするな、俺はお前と付き合ってるって言われても別に気にしない。」


「気にして!?もはや親子レベルに子供じみた私と付き合ってるなんて、」


嫌に決まってる、そんな事まで気を使わないで欲しい。わかってるから、影山くんと釣り合ってないことなんてわかってる。


「うるせぇ。」


へ、なんて思った時には私の後ろにある玄関の扉に手をついていた影山くん。


ドン、なんて言って鳴った扉に、あれもしかしてこれって、


「…………俺にはお前が必要だ、もう二度と離れていくな。」


壁ドンじゃん。なんて気づくのと影山くんからの殺し文句のダブルパンチに抵抗する術もなく、私はあまりにも呆気なく首を縦に振った。

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