失礼な人達
ピンポーン。
「はいはーい!」
鳴らされたベルを聞き、玄関へ向かう。
今日は私は休みだが、影山くんは仕事と言うか練習と言うか。
なので我が家には今日私しかいない。私が出なければ。
「はー……」
い。と繋がろうとした音は途絶える。あれ?
1度冷静になって…そしてモニターを見ると、…………やっぱり。
「…………はい。」
恐る恐るモニター越しに出ると、
『あ!!出た!!えっと……何さんやったっけ?』
『苗字さんです!!』
『こんにちは!苗字さん!!』
見たことある、凄くある。テレビとか。なんなら影山くんから話を聞いた事もある。
「えっと、……影山くんはいないですけど……。」
『それは知ってる!今雑誌の取材受けてるからな!!』
そう言いながらにゅ、ともう1人現れる。あれ、この人は確か同じチームなのでは。
「じゃあなんでうちに……?」
『苗字さんに会ってみたくてなぁ!!』
『ね、苗字さん!開けてくれない!?』
そう迫る方々。…………もとい日向くんと宮選手、そして星海選手はぐっ、とカメラに近づいたようでモニターはえらいことになってる。
「えっとー…………影山くんに聞いてみてもいいですか?」
ここは影山くんのお宅だ、私の判断だけでは流石に家に上げられない。
『大丈夫大丈夫!!飛雄くんには許可貰っとる!』
「えっ?」
『え?そうなんですか?』
そう宮選手に聞く日向くん、それに対して悪い顔をしてコソコソと何か話してる宮選手。…………本当に許可取ってるのだろうか。
「……一応本人に確認しますね。」
『あ、あーー!!今忙しいだろうし、やめといた方がええと思うよ!!うん!!』
『ちょ、侑さん!!影山怒らせたらまずいっすよ!!』
『大丈夫やって!!飛雄くんが怒ったところで可愛いもんや!!』
『い、いやいや!!侑さんは知らないんすよ!!あいつが本気で怒ったらやばいんすよ!!』
『いやむしろ何したん翔陽くん。』
『こ、後頭部にサーブを……じゃなくて!!』
『なぁ、開けてくれねぇ?ちゃんと影山には俺達から話つけるからよ!頼む!』
「ぐぬぬぬぬ…………。」
少なくとも話を聞いてる限り影山くんの先輩にあたるんだろう、年上だし。
それなら星海選手だけでも無下には出来ないな……いや宮選手もか……。
これは私だけでは判断出来ない、そう考え私は影山くんに電話した。
「あ、もしもし?影山くん?」
『あ!!ちょ!!やめといてって言ったやないか!!』
『あー…………終わりましたね、侑さん……。』
『もしもし、どうした?』
「今家に宮選手と星海選手と日向くんが来てるんだけど、」
『は!?』
「家に入れて欲しいって……。」
『駄目だ。』
「だよね…………。」
「あの、影山くんが駄目って言ってます。」
『じゃ、じゃあ苗字さんだけでも会わせてくれへん!?下降りてきて!』
「あ、それなら……。」
『駄目だ。』
「え?駄目なの?」
『それも駄目なの!?影山のケチ!!!』
『会わなくて良い。』
「いや、でも、」
『わざわざ会いに来たのに!!なんで駄目なんて言うんだよ、影山のやつ。』
むすー、とむくれる御三方。えぇ……でもここで会ってしまったら影山くんがむくれてしまう。えぇ…………?
私はどうしたら…………。
『悪い、まだ取材中だから切る。会わなくて良いからな。』
「あ、う、うん。ごめんね忙しい時に。」
『大丈夫、じゃあな。』
影山くんとの通話を終え、改めてモニターを眺める。うーん……。
せっかくここまで御足労頂いた訳だしなぁ……私なんか見てもなんも面白くないだろうけど、それで満足するなら……。
「あ、あの、」
『ん?』
「下降りるんで、待ってて貰えますか。」
『え!?苗字さん来てくれるの!?』
「うん、でも影山くんには内緒にして貰えますか?」
『おう!!ありがとな!!』
◇
「こ、こんにちはー……?」
「おぉ!!これが生苗字さ……………………え?」
「久しぶり!!苗字さん!!」
「ひ、久しぶりだね日向くん!」
本当にご立派になられた日向くんに生で会うとそりゃあ迫力があって、少しだけ怖気付いてしまう。
普段は更に巨大な影山くんと生活していると言うのに。
「…………あの、苗字さんって……。」
「はい?」
宮選手が私を上から下までじろじろと眺めながら声を発する、な、なんですか。
「ちいせぇな。」
「はい!?!?」
「いやそれな!?!?俺も思ったんやけど!!!」
「あの!?!?」
唐突に発せられた失礼発言に激しく動揺する。え!?初対面でそんな事言う人いる!?
「苗字さん高校生の時から身長伸びてないの?」
「うぐっ…………の、伸びてない。」
「え!?じゃあ高校の時から飛雄くんと身長差やばない!?」
「なんなら今なんて親子に見えそうだよな?」
え?なんで初対面なのにこんなフルボッコ?
泣きそうだよ?影山くんの言うこと聞かなかった罰かな?
「…………常に影山くんには見下ろされて生活してます。高校生の時もチビな私は影山くんに色々助けられてました。」
「いやそんだけ小さかったらなぁ……なんか、こう……想像してた苗字さんとは違ったなぁ。」
「確かにな、もっとこう、影山と並んで歩いてそうな……。」
「ほ、星海さん!?そ、それぐらいに…………あぁ!!苗字さん震えてるじゃないっすか!!」
想像とは違くてごめんなさいね???
なんですか、影山くんにお似合いな長身スレンダー美女かと思いましたか、馬鹿野郎!!ちんちくりんだよこちとら!!
「……では、私はこれで。」
「あ!!ちょ!!苗字さん!!」
「あぁあ…………もう!!星海さんと侑さんが失礼なことばっかり言うから!!!」
「だってあんなに小さいとは……。」
「思わねぇよなぁ、ほんとにあの子が影山の好きな子なのか?」
「はい、その筈ですけど……。」
「いやでもあの二人だと親子にしか見えへんよなぁ。」
「誰と誰が親子に見えるんすか。」
「…………え?」
「………………あっ。」
「か、影山、そ、その、これは、」
その後帰ってきた影山くんに何故か彼らと会ったことはバレていて、正座で説教される事になってしまった。あれ?