親友
「私はね、影山くんの友達を辞める気無いよ!!」
「…………そうか、ありがとう。何の話だ。」
素直にありがとう、と言った影山くんが珍しくて目を丸くすると、なんだその顔。とほっぺを抓られた。
すぐに抓るのやめて欲しい、痛いから。
「私は、影山くんの友達を辞めるつもりはありません!!」
「だからなんなんだその宣言は。」
「影山くんの友達を辞めません宣言。」
「…………そうか。……なんで宣言してんだ。」
「私は、影山くんの事が好きな子達に嫌がらせを受けたとしても、友達を辞めるつもりは無いですよ!と言う宣言。」
「……は、嫌がらせされてんのかお前。」
「いや、されてないけども。」
「なんなんだよ。」
一瞬心配そうに眉を寄せた影山くんだったが、すぐに呆れた表情に戻った。されてないよ、大丈夫です。
「少女漫画的な展開で言ったら、現在モテモテな影山くんと一緒にいる私は嫌がらせを受ける気がしたので、それでも友達でいるよ!!って先に宣言しておこうかなって。」
「出たな少女漫画。」
「だから安心してね!!」
そう笑いかけると、それより嫌がらせを回避する方向で考えろよ。と笑われた。確かに!!
「それにしても影山くんモテモテだよね、最近。凄い、漫画の中の人みたい。」
「少女漫画の?」
「当たり前じゃん。」
「そこまでじゃねぇだろ。」
「いや、ほんとに!!この勢いでいったら影山くん、卒業する時学ランのボタン全部無くなっちゃうんじゃない!?」
「少女漫画だとそうなるのか?」
「そうなってた。」
「じゃあなるかもな。」
「凄い!!もし本当になったら写真撮らせて!!」
「は?なんの。」
「ボタン全部もぎ取られた影山くんの写真。」
「はは、なんだそれ。」
そんな人中々見ることが出来ないだろう。実際今も凄く貴重な過ごしてる気がする。こんなにモテモテな人と毎日話せるなんて。
「でも影山くん、彼女作らないよね。あれだけ告白されてるのに。……好きな人いるから?」
「……ん、まぁ。」
「じゃあ好きな人から告白されたら、付き合う?」
「それは……まぁ、そうだな。」
「うわああ!!そうなると良いねぇ!!」
「……漫画だと、どうなんだよ。」
「……うーん、どうだろう。好きな人から告白されるのもあるし、好きな人は別の人が好きで、って言うのもあるし。」
「……好きな人の恋愛対象にさえ入れてない、とかは?」
「えぇ……あったかなぁ……って言うか本当に誰?教えてよ!!私と影山くんの仲でしょ!!」
「どんな仲だよ。」
「友達!!親友!!」
親友なんて、言い過ぎだろうか。こんな学校で話す程度の友達で、自意識過剰?
しかし影山くんが浮かべた表情はなんとも言えなくて、
強いて言えば、少しだけ寂しそうで。
「……これ以上無い、友情だな。」
「……そ、そう!!だから、教えてよ。」
「嫌だ。」
「なんで!?」
「お前にだけは絶対教えない。」
「なんで!?私の事嫌いなの!?」
「別にそんなんじゃねぇけど。」
そう言って楽しそうに笑った影山くんは、先程の寂しげな表情など無かったかのように振舞った。
あの表情は、何を思った表情なのだろう。
大好きな片想いの相手の事でも想ったのだろうか、そんなにも叶わない、しかし恋焦がれる影山くんの想い人が、
知りたいような、知りたくないような。自分でもどうしたいのかわからなくなった。