現状回避

「………………ちょっと付き合え。」


「え、え!?ちょ!?」


何人かやっちまってそうな顔した影山くんが突如現れ、私の腕を引き連行する。


い、今からご飯食べようと思ったのに……!!


手に持ったお弁当の袋もそのままに連行される。去り際に見えた友達はいってらっしゃーい。となんとも呑気に見送っていた。





「……助けろ。」


「…………私の力ではどうにも……。」


「そこをなんとか。」


「無理だよ!?」


もぐもぐと2人でご飯を咀嚼しながら会話する。屋上って入れたんだ、知らなかった。


「あの人達、すげぇ苦手だ。」


「苦手そうだよね。」


「わかってんなら助けろよ、友達だろ。親友だろ。」


「うぐっ…………でもあそこに私が入ると更に拗れそうというか……。」


「じゃあどうしたら良いんだよ。」


「うーん……友達は、チヤホヤされるのは今だけでそのうち影山くんがポンコツだってわかったら離れるだろうから、そうなったら前みたいに話せば良いんじゃない?って言ってた。」


「…………なんで地味にディスられてんだ俺は。」


でも確かに。と割と納得した様子の影山くん。ご自身がポンコツだという自覚がお有りのようで……。


「わかった、もう暫く様子見てみる。」


「うん、頑張って!!もうちょっと落ち着いたら前みたいに話そう?」


「ん。……あの人たちもお前みたいに面白かったらこんなに苦痛じゃなかったのに。」


「私そんなに面白いことしてたっけ。」


「なんか、こいつ馬鹿だよなぁ。って思わされる。」


「…………影山くんに馬鹿とは言われたくな……いてててて!!?」


手が早い!!暴力までが一瞬!!秒!!酷い!!悩む余地無しなのが1番酷い!!


「……っあはははは!!お前、ひっでぇ顔。」


「だ、誰がこんな顔にさせたと!?」


「あははは……俺だな。」


「もう……ご飯食べ終わったから教室戻る!!」


「ん、俺は後から戻る。」


「え?なんで?」


「一緒に戻ったら変な誤解させるだろ。」


……お前まで巻き込みたい訳じゃねえし。ぶっきらぼうに発した言葉は、私を守る行動が故か心がぽかぽかと暖まって。


「……うん、ありがとう。」


心做しか気持ちが晴れやかになった気がする。私も影山くんと話せなくて気落ちしていたのだろうか。


早く前みたいな日常が戻ってきますように、そう願いながら私は階段を駆け下りた。

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