ジェームズさんの「エバンズ」が「リリー」に変わったのはいつ頃だっただろう。
私は密かにジェームズさんへの想いを募らせていた。
でも、学年が違う私がジェームズさんに声を掛けるタイミングなんて大広間にいるときか談話室にいるとき、あとは限りなく可能性は低いけど移動中に見かけたときくらいだ。
しかも、私が見かけるときはたいていジェームズさんは彼女にべったりだった。

「エバンズ、今日も美しいね。惚れ惚れするよ」
「あら、どうも。でもあなたに言われたって全く嬉しくないわ」

美しい、素敵だ、大好きだ。彼はいつだって彼女に最上級の言葉を送っていた。
でも言われた彼女はいつだってつんけんして、ジェームズさんの言葉を聞き流す。
私だったらどれだけ嬉しいか。なぜ、そんな態度が取れるんだろう。
汚い感情がぐるぐる腹の奥底で渦巻く。たしかにリリーエバンズはきれいだった。整った顔立ちに美しい赤い髪。噂では勉強もできるというし、まさに才色兼備。

嫌う


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