++SS

▽2017/04/16(Sun)
ハルトと下世話な話
日課
 
 テーブルの上には食べかけのポップコーンやジュース、中途半端なお酒の缶が転がっている。彼女がお風呂を上がるまでの時間、なんだか柄にもなくそわそわしてしまって気まぐれに番組を回し見ていた。
 次の日の休みも被っているしDVDでも借りて家で映画でも見ようか、と約束を交わしたのが2週間ほど前。俺の家に来ることは何度かあっても、彼女の家に俺自身が訪れるのは初めてで、しかも俗に言う″お泊まり″をするのも初めてだった。女性の部屋に一人取り残されると言う状況に心が落ち着かない。それに彼女と付き合い始めてそこまで日は経っていない。彼女がお風呂を終え、次に俺が入ることになる。その次に俺はいったいどうしたらいいのだろう。付き合って日が浅いというのに手を出してしまうというのも何だかがっついているように見えてしまうかもしれないし、何より彼女とはゆっくりと距離を詰めていきたいと思っていた。彼女の甘いいいにおいがそこらかしこからするこの部屋は今の俺には毒だった。
 ごめんね、長風呂しちゃった、とがちゃりと彼女がドアを開けた。濡れた髪をタオルで巻いているせいで普段日に当たっていないだろう白い項がしっかり見えた。寝間着用だと思われるの大きいシャツからは彼女の下着の色まで透けて見えた。それに固まっていると、彼女がどうかした?、とこちらに向かってきて、上気してほんのりと赤くなった胸元や太ももを惜しげも無く見せるものだから、目を背けて慌てて何でも無い、と言う。
「ハルトくんもお風呂どうぞ」
「ああ、ありがとう」
 彼女が腕を上に上げ、ストレッチをする。だぼっとした裾から伸びる腕はふにふにとしていて柔らかそうだった。次に地面にぺたりとお尻を付けて、足を真っ直ぐに伸ばしてからつま先に手をつけようとする。全然つく気配は無いけれど。
「手伝おうか……?」
「いいの?」
 実はすごく体が硬くて、と彼女が言う。その後も色々と柔軟をしたけれど、洒落にならないほど硬くて驚いてしまう。背中を少し押すだけで痛い、と喚くように言う彼女に俺はふっと疑問が芽生えてしまった。果たして、彼女とそういった行為ができるのか、と。
 そういった行為をするためには女性側の体の柔軟性というものが非常に大切だと言うことは知っている。ただでさえ女性の体に負担がかかる行為だ。この彼女の体で行ったら、関節が外れたり翌日の痛みが尋常ではなかったり、そんなことになってしまうのではないだろうか。こうやって自身の体の硬さをストレッチをし始めたのはいつぐらいからなのだろう。ここ何年もしていてこの硬さなら、と思いすっと目の前が暗くなる。
「止まってるけど、どうかした?」
「ん、いや、なんでもないよ」
 もしかしたらあと何年もそういった行為ができないのかも、そう思ってしまって、ぶんぶんと首を振る。彼女に負担を強いなければいけない行為をするのはいやだ。けれどそうすると据え膳に据え膳を重ねなければいけないだなんて。どうにかして彼女の体を柔らかくさせなければ。ぐっと背中に力をこめると痛い!と言う彼女。そんな彼女は、俺がそんなことを思っていることなどまったく知りもしないのだろう。
 
 
 


category:palm

ALICE+