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▽2017/04/19(Wed)
Beitと名前問題

 恭二は、と渡辺さんが彼に話を振る。それにピエールさんも加わって三人で楽しげにお話をしている。次の撮影まで少々時間があるので、事務所で待機をしているのだ。Beitの三人って仲良いよなあ、と思っているとプロデューサー、と呼び止められる。私はそれに返事をした。
「どうしたんですか?」
「期間限定のアイスクリームの話をしていて、あのきな粉と黒蜜のやつ。食べたことある?」
「あー、発売する頃には売り切れになってるアレですか?」
「そうそう」
「みたらしとくるみのはあるんですけど、そっちは無いですね。いつも売り切れで」
「だよね」
 聞くところによると、三人とも食べたことが無いらしい。それでわいわいと盛り上がっていたみたいなのだけど。
「恭二とみのり、二人のお話を聞いて、ボクも食べてみたいって、思った!」
「うーん、どこかに余ってる店舗とかありますかね……」
「恭二がさっき、一昨日ぐらいにまだある店舗見つけたって」
「えっ! どこですか?」
「これから撮影のあるスタジオの、裏のコンビニなんだけど」
 それだったら行きましょう!、と私が言うと三人の顔がぱあっとほころぶ。私自身、そんなに固執していたわけでもないのだけど、SNSで見る度に美味しそうだと思っていたし、それがなかなかに見つからないのに痺れを切らしていたのだ。美味しいって言われたものを食べれないのはなんかちょっと悔しい。それでは撮影が終わった後に絶対寄りましょう、忘れてたら声掛けてください、と彼らに言う。それにしても珍しい、二人がこんなに食べたい!って言うなんて。
「でも珍しいですね。ピエールさんはともかく、みのりさんと恭二さ、……渡辺さんと鷹城さん」
 うわああ、間違えた。三人が名前で呼び合うからついついつられてしまうのだ。私が口をあわあわとさせていると、三人が吹き出すように笑った。
「ま、間違えたんです! 他意はないです!」
「プロデューサーさん、どうしていつも二人のこと、名前で呼ばない?」
「気恥ずかしいんですよ……!」
「ピエールだけ名前呼びだから、疎外感あるなあって思ってたんだけど、そういうことか」
「みのりさんはまだ大丈夫なんですけど、」
「いつもそれでいいのに」
「まだ大丈夫ってだけです……! 恭二さんって呼ぶとめちゃくちゃ恥ずかしくないですか」
「なんでだ……?」
「こう、家で亭主を待つ妻感があるじゃないですか、響き的に……!」
 あー、もうつられないようにしなきゃ、と頬をぱちぱち叩くと、みのりさんが俺たちにつられちゃえばいいのにね、とピエールさんと鷹城さんに尋ねる。絶対つられるものか、と思うけれど実際両手で数え切れないほどつられているので、たぶんこれからもつられて名前で呼んでしまうに違いない。



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