++SS

▽2017/04/22(Sat)
天道輝に惚れそうになる
 お酒を勧められて断ることが出来ない。それが営業であるならばなおさらだ。
「先ほどから全然飲まれてないですけど、体調が悪いとか?」
「あ、いえ……!」
 いただきます、とおちょこに入った日本酒を飲み干す。喉の奥が焼けていく、アルコールを飲んでいる感覚。そうして注がれる新しいお酒。私は愛想笑いをしながら、彼らの話を聞く。
 向かい側には初老は越えただろう男性が二名と、横には既に良い感じに酔いが回っている天道さん、そしてお酒があまり得意では無い私。向かい側の彼らは大手テレビ局の人気番組のプロデューサーで、私たちは営業のためにこうやってお酒を飲んでいるのだった。
 向こう側のこちらに対する評価も悪くないし、この話がまとまれば、人気番組の出演は今すぐには無理かもしれないけれど、違う番組には起用して貰えるかも。そんな状況なのに、私が酔っ払ってしまったらまずいだろう。しかし既に酔いが回ってきていて、呂律が回らなくなりそうだ。天道さんはお酒が弱いから、明日も朝一で仕事の彼を庇うように飲むと、どうしても私の酔いが早まるのだ。注いで注がれて、その繰り返しで頭がぐわんぐわんする。
 また注がれた、私がもうやばいかも、と思いながらおちょこを取ろうとすると、彼の手が伸びる。そしてそれが彼の口に運ばれて、それに驚いたように見ていると無理するな、と口をぱくぱくと動かした。



・・・



「うーーーしんど……」
「プロデューサー、随分飲んでたからな……」
 彼の肩に寄りかかりながら帰途に就く。彼もまた私の腰を支えている。酩酊期ならぬ泥酔期も近い状態で非常にしんどい。
 ほれ水いるか、といつの間にか彼が買ってきてくれたペットボトルを私の頬に押しつける。要ります…、と言うと手元がおぼつかない私の代わりに、彼が蓋を開けて、ゆっくりと飲ませてくれた。至れりつくせりである。
「天道さん居なかったら泡吹いてしんでたかも……ありがとうございます……天道さんお酒弱いのに」
「これやばいだろうと思って、序盤から水がぶ飲みしてたからな。何はともあれ、無事営業も終わったし良かったな、プロデューサー」
「あちら側から良い返事いただけて、本当によかっ……うっ」
 胃液が逆流してくるのを感じて思わず口を押さえる。それに気が付いた天道さんが私の背中をさすってくれた。大丈夫か吐くか、と尋ねられ私は首を横に振る。本当にすんでのところで止めたけれど、こんな天道さんに見られて吐くのは本当に無理。何が何でも阻止しなければいけない。出かかったものをなんとか飲み込むと、彼がペットボトルの水を差し出す。それをシャツが濡れてしまうのも厭わずにごくごくと喉を鳴らして飲むと、だんだんと吐き気が収まってきた。




category:sideM

ALICE+