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▽2017/09/24(Sun)
緩い感じの可愛い下着を着けていたときの反応/sideM


 組み敷かれている。熱っぽく吐息混じりに名前を呼ぶ声と、素肌に触れる火傷しそうなぐらい熱い手、こちらを見据える艶やかな目。
 今から行われるであろう恋人同士がするそれを目前にして、私は頭の中で今日の下着は何だったっけなと頭をフル回転させている。くたくたになった下着は着けていないはずだ。こういう行為に及ぶ可能性がある日は、手違いで無ければ着けてないたぶん。上下セットになっているものだったかな、あれベージュだったかな、なにぶん昨日の夜のことなんて三歩歩いたら忘れる頭をしているので覚えてないし、今日の朝も忙しかったから適当に服を着て逃げるように家を出たから全くもって記憶に無い。
 我ながらこんな雰囲気の中で、こんな見当違いのことを考えているなんて酷いものである。別のことを考えるな、と言うように少し眉根を顰める。するりと衣服がずり上げられて、思わずあっ、と声が出る。
 思い出した。緩い絵柄のパステルカラーの下着だ……。





【桜庭薫の場合】


「ほんとすみません……」
「なにがだ」

 うわ、恥ずかしい。私は思わず顔を手で覆った。
 彼がしげしげと眺めているのが、痛いくらいの視線で伝わってくる。幻滅、はされてないと思う(そう信じたい)けど、こんな年齢的にファンシーな柄を着ていると言うことで似合わないと思われているに違いなかった。必死に弁明する。

「あ、あの、見つけたときに可愛いなあって思って試着してぴったりで、家で着る分にはいいかなって思って買っちゃったんです、でもそれすっかり忘れてて今日着て来てしまっ──むぐ」
「何も似合わないとは言っていない」

 似合うとも言ってないんですけどね! 彼がつつつ、と肌とブラジャーの際をなぞる。それがくすぐったくて背中が上がる。その瞬間ぷちん、と裏の金具が外されて、あっ、と声が出る。可愛らしいとは思うが、脱いだら皆同じだろう、彼が耳元で囁いた。






【柏木翼の場合】


「すごい、可愛い下着ですね! 下も同じ柄なんですか?」

 はい、いいえを言う前に、彼がスカートをするりと抜いた。ブラジャーにショーツ、ほぼ裸同然にひんむかれる。その気持ちはさながら、まるで解体を待つマグロのそれである。
 ひい、と思わず悲鳴を上げた。胸元を腕でめいいっぱい隠して、足も折りたたむ。翼さんはぐいぐい、と私の手を追いやろうとするし、足に自分の足を入れて開こうとする。悲しいかな男女の力の差で勝てなかった。

「もう恥ずかしいので見ないでくださいよ……」
「せっかく可愛いんですから。ちゃんと見せてください」

 ね、と彼が緩く微笑んだ。この男にいつまで経っても勝てそうに無い。






【山下次郎の場合】

「年甲斐も無くこんな下着を着て来てしまったこと深く反省してます……」
「いや、可愛いと思うけどねえ」

 この柄うさぎ?、と次郎さんが尋ねてきたので、私は目を反らしながら頷いた。
 次郎さんはふーん、と穴が開くほど私を見つめる。それに居心地が悪くて、変な汗が出てきた。

「でもどうせなら猫の方が良かったな」
「? どうしてですか?」

 彼が猫好きだからだろうか、と思っていると、ほら、にゃんにゃんするし。猫だけね、と彼が顎に丸めた手を添えてにゃんにゃん、と言う。何だかそれにやりきれないものを感じて、股間を軽く蹴ると、いったいだけど!、と彼がぷんすこ怒った。





【硲道夫の場合】

 最後の抵抗に、ブラジャーを隠すように身体をぎゅっと縮める。
 彼が大きく目を見開いた。道夫さんがこんなに驚くのも珍しいかもしれない。そんなに似合わないのかな、と内心冷や汗だらだらでそう思っていると、みるみると彼の顔が上気し始める。彼は首筋から赤くなっていくのだ。その一部始終が間近で見れてしまった。

「え、ど、どうしたんですか……?」
「いや、その、」

 いつもと違って新鮮だと、と彼が言いながら硬いものを押しつけられてひっと声が引きつった。
 



【伊瀬谷四季の場合】

「えあ、か、かわいい……。めちゃくちゃかわいいっす」

 捲られた瞬間思わず隠すように交差させた腕だけれど、それもどうやらまったくこ無駄に終わったようだった。
 彼は目をきらきら輝かせて、いったいどうしたんっすか?、と尋ねる。それに家で着るようだったつもりが間違えて着てきたことを伝える。

「いつもレースとか、シンプルなやつだから今日のメガメガ新鮮っす!」

 彼がよく着ている服のブランドでも、女性用の下着を展開しているらしく、今度一緒に選びに行こうとせびられる。いいけど、私じゃちょっと可愛すぎるんじゃないかなあ、と言うつもりがいいけどから後を彼のやった嬉しいっす!、という言葉に遮られる。




【鷹城恭二の場合】

「へえ、いつものやつとは構造的に変わらないのか?」
「あ、あの恭二さん」

 紐が華奢な気がする、と彼が肌とストラップの間に指を入れた。次にいつものと違って素材があんまり硬くない、とカップの部分に手を添える。
 なんだかすごくむずむずしてしょうがない。彼はしげしげと眺めながら、これ、いつもと同じように外れるんだよな、と私に確かめるように尋ねながら金具に指を添えた。





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