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▽2017/04/15(Sat)
柏木翼と他愛もない話
「柏木さん! 聞きましたか!」
「なんですか? プロデューサー」
「ドラスタで、クイズ番組出演決定しました!」
「えー! そうなんですか!」
 事務所の廊下で偶然鉢合わせした柏木さん。手にスポーツドリンクを持っていることから、ダンス練習の休憩時間なのかもしれない。彼も、もちろん同じユニットである桜庭さんも天道さんも、努力を怠らない人なので、きっと今朝の先生からのダンスレッスンの復習をしているのだろう。
 彼が驚いたように目を見開いてぱちぱちと拍手をする。地上波のお仕事だ−、と嬉しそうに顔を緩めた。
「詳しいことが入ってきたら、日程だとか出演日だとか追々教えますね」
「はい、よろしくお願いします」
 にこにことしていた柏木さんの顔が、クイズ番組は何度か見たことがあるけど参加するのは初めてだし緊張するなあ、と少し不安そうに翳る。それに私は目を思わずぱちぱちとさせてしまう。まさか彼がそんな風に考えているとは思わなかったのだ。
「やっぱりクイズ番組に控えて勉強した方がいいですか?」
「えっ」
「いや、あの、あまり問題に答えられなかったらファンの人達に幻滅されちゃうかもって思って……」
 不安で、と苦笑いした彼に私は大丈夫、と答える。
「大丈夫ですよ! それに無理に勉強をしなくても、ファンの子たちは自然体なドラスタを見たいと思ってると思いますし」
「そうだといいなあ」
 オレ、頑張ります!、と小さくガッツポーズした彼に私は微笑む。それに、と付け足すように私は口を開いた。
「元はといえどもパイロットに弁護士、外科医がメンバーで偏差値凄まじいなって思うのに、アイドルまでしてて顔面偏差値まで高いってやばくないですか?」
「え?」
「法学部に入るのも大変だと思いますし、パイロットになるためにもたくさんの希望者の中から選ばれなければいけなくて大変だと思うんです。個人的に、医学部入るのに、物凄い難易度の意味が分からない変態的な問題解かないと合格出来ないみたいなことを友達に聞いたことがあって、そう考えると現役もしくは一浪入った桜庭さんの頭最早良すぎて可笑しいんじゃ無いかなって、あっいた!」
「誰の頭が可笑しいと?」
 そんなメンバーなんだから、三人で力を合わせればファンの子も、ファンではない視聴者の方々も楽しませることできるって!、その言葉を続ける前に頭を叩かれた。それと同時に耳慣れた声が聞こえて、思わずひっと呼吸が詰まる。今とても状況的にやばい感じがする。
「柏木が中々帰ってこないと思ったら、プロデューサーと長話か」
 その話詳しく聞かせて貰おうか、桜庭さんがにやりと笑いながら私が逃げるより先に私の襟を引っつかんだ。絶対この状況楽しんでる。そしてこれに捕まったからにはもう小一時間は拘束されるだろう。きっとこれを脅しにダンスの練習に付き合わせるつもりに違いない。
 柏木さんに視線で助けを求めれば、柏木も手伝え、という桜庭さんのお声により彼がそちら側につく。
「ちょっと柏木さん! そっちにつくなんて卑怯です!」
「ごめんなさい、プロデューサー」
「観念するんだな」
「まって、桜庭さんまだ書類整理残ってるから、いやーー!」


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