++SS

▽2017/12/07(Thu)
天ヶ瀬冬馬と大人になること


 あんたがこうさせたんだろ。
 頬に軽く触れられた手は熱く、目は反らしてしまいたいほど真っ直ぐとこちらを見据えている。意志の強そうな赤茶がかった色をした目に吸い込まれそうになるのは、これが初めてじゃない。彼に初めて会ったときも、スカウトをしたときも、お仕事をしているときも、数え切れないぐらい見てきた。ただ、こんなに近くで彼の目を見たのは初めてというだけだ。

「もう、夜遅いし送るから……」
「逃げんな」

 がしりと手首を掴まれる。その力強さが、もう彼が男の子ではなくて、一人の男性であるということを私に気が付かせるには十分だった。
 彼とは世間一般に言う恋人同士。だけど、アイドルとプロデューサー。そして未だ彼が成人していないというそれが、私たちに溝を与える。それに私自身、彼が私に好意を抱いているということに自信がないで居た。それがただただ、身近に居て信頼できるからこそ生まれた感情なのかもしれない、それを彼が好意と誤認しているんじゃないか、そう思ってしまうのだ。
 ぐいっと掴まれた手首が熱い。彼の目の中に私が映る。今の高校生だって、キスぐらいしてる。逃げられない。ぐっと距離が縮まって、唇と唇が、鼻と鼻がくっつきそうな距離。なあいいか、その問いに沈黙していると、良いってことだよな、そう彼が唇を重ね合わせる。


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