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▽2017/04/16(Sun)
桜庭薫は異変にすぐ気が付く
 桜庭さんから、今日の撮影が無事に終わったとの報告を電話で受けて、肩の荷が下りる。ようやっと終わった。今日の予定を一通り終わらせることが出来て私は深く息を吐く。朝から晩までよくぞ持ち堪えた、私。
 お疲れ様です、と事務所を後にする面々に挨拶をしながら、私はひとりパソコンの前で唸る。昨夜から月のものが来ていて非常に辛かった。特に今日は二日目ということもあって、朝から腹部の鈍痛や頭痛、眠気、それらが邪魔するせいで仕事に集中できなくて参ってしまった。今回は殊更生理が重くて、正直こうやって仕事をするのも、立ち上がるのも一苦労だった。あとは今日の報告書や領収書をドラスタの三人から受け取ってパソコンに入力するだけ。夜の八時を回ろうとしていた。


・・・


「──プロデューサー、」
「あ、はい!」
「君が寝ているなんて珍しいな」
 桜庭さんが耳元で声をかけてくれたのと、それと同時に肩を揺さぶってくれたおかげで起きた。どうやらすることもなく手持ち無沙汰でぼーっとしている間に眠ってしまったらしかった。
「あれ、柏木さんと天道さんは?」
「帰らせた。書類の提出に三人も要らないだろう」
 彼が薄い紙切れを手渡す。丁重にホッチキスで留められたレシートが何枚か、それと文字がびっしりの書いているもの。それを受け取って、それじゃあ桜庭さんもお気を付けて、と言うと彼が小首を傾げた。
「今日は随分と血色が悪いな」
「そうですか?」
 今まで誰にも言われなかったのに、彼からそう言われて肩が跳ねそうになる。何かを言う前に頬や首に触れられて、熱は無いようだと彼が独りごちた。
 彼から全てを見透かされそうな気がして、それが何とも言えず恥ずかしくて、私は桜庭さんに明日も早いんですから、と事務所から出て行かせようと立ちあがるとお腹がずきんと痛んで思わずうめき声を上げる。それを見逃さないのが彼で、腹部が痛むのか、と半ばしゃがんで私を見上げた。
「本当になんでもないので、」
「何でも無いならうめき声など上げないだろう」
 その詰問するような言い方に私は唇を固く結んで閉口する。ちくたくと時計が進んでいくこと。こうなると彼が後には引かないのは分かっている。ずきずきと痛む腹部に負けて、私は重い口を開いた。今日二日目で、その言葉に彼は一瞬首を傾げたようだがすぐに納得したようだった。
「鎮痛剤は?」
「いつもこんなに重くないので、持っていなくて」
「そうか。近くのドラッグストアで買ってくる。夕飯は?」
「まだです……」
 彼は悪かった、と私の腰を支えながら座らせる。ソファの上に乗っていたクッションをお腹に置いて、無いよりはマシだろう、と私に安静に待っているように言った。





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