++SS

▽2022/04/03(Sun)
大人たちの遊び/キバナ

わるいこどもたちの続き

「待ってこれお風呂、ドアガラスじゃん?! バスタブ広い! もしかしてエッチな色変わるやつ?!」
「……お前、色気とかムードとかさあ、あんだろ普通」
「初めて家に連れてきた女にそういうこと求めるのキバナさん。引くわ帰るね」
「待て待て待って、帰らないで」

 何年かぶりに再会した旧友をただの友人としか見ていないのか異性と見ているのかが双方の反応でよく分かる。
 リビングからよく見える位置にあるすけすけなガラスのシャワールーム、信じられないほど大きいアイランドキッチン、日がさんさんと差す街を見下ろせるバルコニー。さすがナックルシティ随一のタワーマンションに住んでいるだけある。私の住んでいる築20年の1DKより5倍は広い。さすがジムリーダーは違うな……と思いながら見ていると、隣のキバナが盛大にため息をついた。こんなはずじゃなかったのに、とぶつくさと文句を言っている。

「キバナさん的には、本当に初っ端から私連れ込んで押し倒したかったってこと?」
「そういうことじゃねえけど、そこまで堂々とされるとこっちのペースが狂うっていうか……」
「隙があればそういう行為に臨むつもりではあったという解釈でよろしい?」
「期待は無かったと言えば嘘になる……」
「フーン、本当にベッドの下とか洗面台の下とか覗いて良い感じ?」
「別に良いけど、お前本当に容赦ねえな」
「意外。もっと拒否されるかと思ったのに」
「#ナマエ#が思ってるようなモンはなんもねえよ」

 部屋あげられて、ソファにちょこんと座りながら「久しぶりに会ったから緊張しちゃうな」なんてしおらしく言ったら、完全にキバナのペースでそのまま押し倒される可能性を感じる。最初からフラグをへし折っていかなければこの男と対峙など出来ないのだ。それもこれも、先ほどの彼の「何年も前からずっと好きで探してた」云々の爆弾発言があったためである。自分に好意のある男の家で二人きりになった時点でこちらの警戒心は相当強い。
 彼はハアと頭を手で押さえながら深くため息をついた。お前は昔からそうだと言わんばかりの空気をひしひしと感じる。

「連絡先交換しようぜ」
「今このタイミングで?」
「連絡先交換せずに帰したら絶対詰むから今のうちに教えてくれ」

 ヘイロトム、と声をかければ鞄の中からスススと端末が出てくる。電話番号で良いかと尋ねれば彼が頷いた。
 番号を教えてややもすると、彼からのメッセージが届いたのでそれに適当な言葉で返しておく。

「マジで嬉しい」
「そんな連絡先なんてすれ違っただけで貰えるでしょキバナは」
「お前のだから嬉しいんだよ。分かるか? 12年ずっと探して見つかんなかった。旅してるときに何回も会ってたのに連絡先の交換もせず、トーナメント後は記者の質問もかわして早々に退出、消息は不明でもうガラルから出て違う地方で暮らしてるのかと思った。お前いっつも一人で行動しやがって、友達作るとか旅の醍醐味だろうが。なんで一人も連絡先交換するようなやつ居なかったんだよ!」
「旅してるときに仲良い人見つけられなくて本当にごめん……?」
「昔からそういうところあったよな……。立ち話させて悪い。ソファ座って良いから。飲み物出すわ。コーヒーと紅茶どっちが良い?」
「コーヒーにする」
「ん、分かった」

 コの字型のこれまた大きいソファの端っこに座る。バルコニーの大きな窓に面しているため、日がよく当たる場所だ。私が借りている昼間でも薄暗い部屋とは大違いである。男の一人暮らしにしては小綺麗だ。というか綺麗すぎるぐらいだ。それなのに生活感はある。
 ガガガとコーヒー豆を削る音がする。すごいこの家コーヒーメーカーがある。ちょっとお高いし、コーヒー飲むときなんて朝か夜ぐらいしか無いし、と買い渋ってたものである。

「#ナマエ#」
「ありがとう」
「口に合うかわかんねえけど」

 マグカップを手渡され、ミルクと砂糖はいるかと尋ねられたのでそれに首を横に振る。
 
 




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