++SS

▽2022/04/03(Sun)
媚薬を飲んでから五時間経たないと出られない部屋/桜庭薫


 頭がぼんやりと霞がかっている。ここはどこだろう。ピントが合わない目をこする。
 どうやら私は椅子に座って船を漕いでいたようだった。まさか事務所で居眠りしていた?、とあわてるとどうやらそうではなくほっと胸をなで下ろす。胸をなで下ろしたのも一瞬で、一気に頭が覚醒した。そこは見渡す限り白で塗りつぶされた部屋で、私の記憶には無い場所だったからだ。
 机の上には薄い桃色の液体が鎮座している。栄養ドリンクほどの小瓶だった。「このジュースを飲んでから五時間経過したあと部屋から出ることが出来る」と書いてある紙が横に置かれている。つまりこの液体を飲まなければ部屋からは出られないということなのだろう。目の前の机、私の座っている椅子、あとはベッド、扉が一つあるがそれが出入り口なのだろうか。変哲もないただのドアのように感じるが、鍵がかかっているのだろうか。ジュースを飲んで何時間したら部屋を出られるのならそれでいいか、と小瓶に手を伸ばすと、ガチャリとドアが開いてその開けた人物と目が合った。

「桜庭さん?! どうしてここに?」
「君こそ」



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