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▽2022/09/11(Sun)
人のなんちゃら犬も食わない/ニコラ・フランチェスカ



「#名前#さんニコラさんはどうなんですか?」
「え〜、それってどういう意味?」
「恋愛的な意味でですかね」
「んー、仕事するにはいいけど恋人にするにはイヤでしょ。女たらしじゃん。レオの方が好き」
「えへへありがとうございます。でも本当は?」
「ドミニコおじさま」
「あの人奥さんと仲良いから取り付く島ないですよ」
「そうなんだよねえ」

 ギリギリ聞こえる位置に座る、澄ましてエスプレッソを飲むニコラさんの視線がチクチクとオレの体を刺す。それとなく聞いておいてと言った割に、その歯がオレに向かうとすぐこれである。消化しきれない怒りの感情がこちらに向いていることに割の合わなさを感じる。
 #名前#さんはファルツォーネの紅一点というわけではないけど、幹部に限ればそれなのだ。加えてファルツォーネの人間というのは顔立ちが整っている人が多い。それは例に漏れず#名前#さんもで、数少ないファルツォーネの女性で綺麗で性格も良いし仕事もできるとなれば、イタリアの男が放っておくわけがない。街中を歩けば男から必ずと言って声がかかるし、噂によればヴィスコンティのボスも彼女に気があるやらなんやらと聞くし、ファルツォーネの構成員も彼女と食事に行く機会を窺っている(こちらについては成功したところを見たところがないけど)。

「でもね、私レオのこと結構すきだよ」
「えっ」
「この前街を巡回してたときにヴェローナ通りで雰囲気の良いバルを見つけてね。小さいお店だったんだけど、コーヒーは良い豆を使っているみたいだし、ドルチェも手を込んだ物を提供しているみたいで、どうかな? 今度一緒に行かない?」
「いや、あのちょっと」
「だめ? 私、好みじゃない?」
「そういうわけじゃなくて、#名前#さんとデート出来るのはとっても嬉しいですけど!」
「けど?」

 ニコラさんの視線が痛い。というかもう殺気立っているのではないかと思うぐらいだ。
 #名前#さんは豊かな金色の髪の毛を揺らしながら、駄目かな?、とだめ押しをするように言う。
 こんなに冷や汗をかいたのは久しぶりだった。初めて銃撃戦に居合わせた時以来かもしれない。
 ここはどう返答するのが正解なのだろうか。断っても引き受けてもニコラさんが黙っちゃいないだろう。新月の夜は帰り道に気をつけなさい、というのはよく聞き馴染みのある言葉だが、その言葉の意味がよく分かる。新月の月の無い夜は暗闇に紛れて人を殺すのにうってつけだ。次の新月の夜はあと何日後だろうか。いよいよ死ぬかもしれない。

「デートのお誘いかな? #名前#とのデートを断る理由なんて無いと思うけどレオ」
「ハイ!」
「」(


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