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▽2026/03/18(Wed)
死ぬことさえままならない/宜野座伸元
 彼女は言った。「なんとなく生きてるんです。本当は早く死にたいのに、そうさせてくれないの」

 生きるのならば周りに迷惑をかけないように、その言葉が強く効力を持ち始めたのはやはり、シビュラシステムが稼働し始めた時だろう。人は皆、サイコパスと呼ばれる善と悪とで分ける数値で管理され始めた。数値が高ければ高いほど、人は社会に不必要なものであると隔離され、著しく数値が高くなれば殺されることもあり得る。その数値が上がることを、色相が濁るとも揶揄する。濁った色は周りに感染する。ひとたび事件が起きれば、その周辺にいる人間の色相は濁る。例えば人の目が多い中で人が死ぬことがあれば、一時的に濁るだけではまだマシだ。一生を収用施設で過ごす者も現れるだろう。自分の生き方が、他人の生き方を悪い方向に変えうる。だから皆口々に言うのだ。人に迷惑をかけないように生きなさい、と。
 彼女は自身に銃口を押さえつけながら、笑いながら言った。彼女の頭の中にはドミネーターの声が響いているはずだ。


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