ご飯を美味しそうに食べる姿/燭台切光忠



 人の身を得てから、刀であったときには大して興味をそそられなかったものが、面白そうだと感じられるようになった。僕の場合、その一つとして料理がある。前の主が料理好きだとは重々心得ていたけれど、僕は刀でその料理を作ることも食べることも叶わないし、その興味も冷め切ってしまっていたのだった。だけど主から顕現をして貰って、人の身を得て、考えが変わった。

「主、良いところに。ちょっと来て」
「はーい。どうしたんですか? 燭台切さん」

 インクが無くなったと万屋に向かった主が早々に帰ってきた。とたとたと廊下を歩く音は刀剣男士の音とはまた違うから、彼女が帰ってきたことはすぐに分かった。僕は厨から身体を出して、彼女を呼び止める。

「鶏のそぼろを作ってみたんだけど、味見してくれないかな」
「します!」

 こうやって厨に率先して立たせてくれる主には感謝している。この本丸に居る男士たちの中でも料理の不得意や得意はあるから、僕が得意な方に属しているというだけだけど。でも主は僕が厨に立つに当たって、他の皆と負担が変わらないように内番の調整もしてくれるし。
 スプーンによそって彼女の口の中にそぼろをいれた。主と僕だと背丈がかなり違うから、こうやってご飯を食べて貰うと何だか小動物に餌付けをしているみたいだ。目を瞑ってもぐもぐと咀嚼をして、そしてカッと目を見開く。そして親指をぐっと上げた。

「ご飯欲しいです」
「それは美味しいってことでいいのかな?」
「生姜がきいてるのと、あと甘辛い味付けが最高ですね。ご飯ください」
「よかった。でも主、もうちょっとでお昼ご飯だから我慢して」

 はい……、と露骨に萎びような声を上げた彼女に苦笑する。主のにはちょっと多めにそぼろ乗せてあげるね、そう言うとぱあっと顔が明るくなった。本当に可愛らしい主である。






20170927