クリスマスが近づく談話室は、赤いベルベットのリボンや金色の美しい光で飾り付けられている。しもべ妖精たちは働き者だと、一瞬にして様相が変わったそれを見ながら思った。冷え切った外に出る気にもなれなくて、寮生たちは暖炉の前でゆったりとくつろいでいる。
そこから少し離れて、小さな机を挟んでふたり、わたしと彼。フレッド。わたしの手元にはミルクティー。この会話のように甘くて、あたたかい。
彼らの親が見分けられないものを、わたしが見分けられるわけなんてなかった。だからわたしは彼の、今ここにいてわたしと話している彼の「自分はフレッドだ」という言葉を信じるしかなくて。彼はわたしをからかおうと思えばそれこそ、きょうだいと入れ替わることもできるだろうに、そうしないのは、そうしないのは。
「名前」
「ああ。ごめんなさい」
「もしかして眠い?」
ほんの少し上の空のわたしに嫌そうな顔一つせず首を傾げるすがたがどうしようもなく好きだった。
「眠くはないけれど」
「そう?ならさっきの続きでも」
彼の話を聞くのは大好きだ。始まりはいつぞや、外で寝こけていたわたしに、「風邪をひくよ、レディ」なんて、太陽のような笑顔で彼が話しかけてきたこと。良くも悪くも有名なウィーズリーの双子はいかなる人かと身構えた頃が懐かしい。少なくとも彼らは、彼は、私からすれば優しい人だった。
「それでその時、」
「その時?」
彼の瞳の中の私はこの上なく幸福だ。話し下手なわたし自身、好きな人がきらきらとした瞳で話すのをきいているのはとても心地よい。身振り手振りを加えながら、いろんな話を、聞き手のわたしが退屈しないようにしてくれる。暖色のカーペットのなかで、小さなぬくもりを抱きながら過ごすこの時間が、永遠に続けばいいのに。
「フレッド」
そっくりな顔がひょっこりと現れる。彼の兄弟だ。
「お嬢さんを独り占めして。隅に置けないなあ」
「なんだ兄弟、嫉妬か?」
くすくすと笑えば彼らも笑った。フレッドは一礼して立ち上がる。
「それではレディ、これにて失礼」
「ええ、いってらっしゃい」
軽く手を振って、肖像画の向こうに消える二人を見送った。一人ぼっちになってしまった。
彼らは生まれた時からふたりでひとつだった。だからこそ、言葉に出さなくてもこの後どうするのか、何をしたいのかがわかるのだろう。そうやって軽々と飛び出して、いたずらを仕掛けるのだ。羨ましいと、そう思う。言葉にせずに、この想いが伝わればいいのに。そうすれば、そしてうまくいけば、彼が私のために割いてくれる魔法のような時間が、もっともっと長くなるはずなのに。
高慢な考えを振り払うようにカップに口をつけた。あんなに美味しかったミルクティーは少し冷めて、悲しい味がした。
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情交と街