セロはそのことにソワソワしていた。187がこんなにも昏睡状態に陥るのが続くのは初めてなのだ。
半グールとはいえ不死身ではないのだと痛感させられる。それほど今回の仕事はつらく、大変なものだったのだろう。
——もうすぐ三日目になりそうだ。
……お願いだ。目を覚ましてくれ。
セロは祈ることしかできない己が憎かった。
もう二度と会えないかもしれない、なんて思ったことなかった。187は猫のように現れてはいつの間にか消えている男だ。そんな相手の心配は最初はすれど慣れればしなくなった。——そうして、油断した。
ミゼリコルデにたどり着いた時には片腕がなくボロボロで、いつになく元気がなかった。またか、と慣れていたつもりだったが、ミゼリコルデの玄関口で187は倒れた。慌ててシンコが容体を診ると、相当ひどい状態だったようだ。187は急いで診療所に運び込まれた。
再生に要する時間は一日程度だと見積もっていたが、シンコのあては外れた。187は一向に目を覚まさない。シンコも不安なのか、酒を一滴も飲まず187につきっきりになっていた。セロもミゼリコルデを閉め、睡眠も忘れずっとそばにいる。
時計に目をやった瞬間——。
「……んん……」
「187!」
セロは思わず大きな声が出たことに驚いた。
187はセロの姿を認めると少し微笑んだあとまた目を閉じた。だが今度は寝息を立てて眠り始めた。どうやら、大丈夫なようだ。
「……大丈夫みたいだな」
シンコも落ち着いたようで、ようやく手に持っていた小瓶の酒をあおった。セロも胸を撫で下ろし、ふうとため息をつく。
「……もう二度と喋れないのかと思った」
「大丈夫さ、コイツは殺しても死なないよ」
シンコは心配していたくせにそう言って退けた。
「……起きたらカレーでも作ってやるか」
「……そうだな」
疲れた二人は、目の前の患者に対してありったけの文句を垂れ流した。
終