187が誰にも見せない『食事』のこと。
だれにも教えていない、フォリーから離れた荒屋に187は住んでいるの。ミゼリコルデに行かない日はずっとこの荒屋で文字通り荒んでいるわ。アタシがいるのもお構いなしに。
だからアタシは『観測』するの。
187は汚い袋からずるりと肉塊を取り出すとそれを荒っぽく食べるの。まるで食べたくないものを無理矢理口にする子どものように。ほんとうに嫌そうなの。
誰にも見せられない姿をアタシだけに見せるの。
それが嬉しくて時々自慢したくなるんだけど——アタシにはその術がない。だって……
「猫か……」
——そう、アタシは猫。それも三つ目の猫。
三つ目の猫は忌み嫌われるの。見たら死ぬといわれて。フォリーではそのことを知らない人が多いから、アタシは歓迎される。
187はこれからミゼリコルデに向かうようだった。アタシはついていかない。187がいる時、アタシは絶対にミゼリコルデには行かないのだ。アタシがミゼリコルデに行く時は187がいない時——。
187がいない時にアタシは観測対象を変えるのだ——セロに。
「お前にもそろそろ名をやろうかな……」
——名前。好かれる時がなかったアタシにとってそれは甘美な響きだった。
「ミャア」
「何がいいかな……とりあえず考えておくよ。じゃあな」
187はそういうと荒屋を後にした。
……なんだ、残念だなあ。
187が帰ってくるか、仕事に行くまでまだこの荒屋にいよう——そして今度はセロの観測に行くのだ。
これがアタシの秘め事。
誰にも話せない、見せられないアタシと187の秘め事。
——と言っても、これはアタシが勝手に思っていること。
いつか意思疎通ができたら、アタシの観測結果をセロたちに伝えようか——。
終