写真

 ぱさり、と落ちた紙切れを拾い上げる。初老の男性とガスマスクをつけた青年が並んで写っている写真だった。写真というものになかなか巡り合わない人生だったものだから、珍しくてうっとりと眺めてしまった。
 ……セロくんと、初老の男性には見覚えがあった。セロくんの師匠である。名前は一度聞いたばかりだから忘れてしまった。
「落ちたのか、すまんすまん」
「おししょーさんと写真なんか撮ってたんだねぇ」
 写真を返すと、セロくんは少し寂しげに小さく「うん」とだけ答えた。
「別れる前の日に撮ったんだ……」
「そういえば俺のいない間に別れたんだっけ……」
 セロくんは丁寧に写真をエプロンに仕舞うと、ふうとひとつため息をつき俺に向き直った。
「今度、撮らないか? 写真……」
 一瞬、固まった。
 あまりにも嬉しい申し出で、俺は舞い上がった。
「写真撮る! やったー! 俺、写真なんか興味なかったけどセロくんと撮るなら別!」
「……大袈裟な奴」
 
 新しい幸せができて俺は今日は眠れない気がしてきた。いや、絶対に眠れない。



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