君だからいいの


 

「はぁ…」


夕暮れが町をゆっくりと包みこむ中、なまえがとある病院から出てきた。
足には包帯が巻かれており、靴に収まっていないかかとがむき出しのまま。大方、病院が混んでいた為に靴もろくに履かずに出たのだろう。


「疲れた…」



とんとん、とかかとを収め、手に持つ本のページをめくる。そういえば、今日は沢山読めたなぁ…そう思いながら信号の下に立った時、偶然風丸に会った。


「一郎太!」

「なまえ!」


学校帰りでそのまま病院に行った制服姿のなまえに対し、風丸は私服で自転車に乗っていた。自転車の籠に入っている鞄と、今日の日にちからして塾に行くんだろうなと理解をする。
風丸は、ふとなまえの足を見るなり心配そうに顔を歪めた。


「なまえ、その足どうした?学校では包帯してないのに…」

「ちょっと、学校の階段から落ちちゃって。大分よくはなったんだ。」

「ふーん…」


あ、青になった。
そう言い、なまえが横断歩道を渡ろうと足を進めようとした時だった。

風丸が自転車からおり、なまえの腕を掴んだのだった。


「一郎太?」

「おくってくよ。後ろ、乗って」

「で、でも塾…!」

「なまえだからいいんだよ」


にっこり笑うと、風丸はなまえの腕をひきなまえを自転車の後ろへと導いた。
なまえが戸惑いながらも、ゆっくりと自転車にのる。赤く染まった頬を、風丸の背中に押し付けた。



End




mokuji / clegateau