俺と来い


 


「佐久間くん!」

「…なまえ…っ!!」


突然、グラウンドから佐久間くんの叫びに近い、痛々しい声が聞こえたので、私は慌ててグラウンドに飛び出した。
今日はもう練習は終わったハズ。なのに、なんで佐久間くんの声が聞こえたんだろう…そう思っていたが、倒れている佐久間くんとその近くで悪魔のように笑う少年を見て、私はすぐに佐久間くんに駆け寄った。


「佐久間くん!何があったの!?」

「だめ、だ…っ…逃げろ、なまえ…!!」

「え…?」

「……ほォ、そいつがなまえってゆーのか?」


佐久間くんが苦しそうに、息を荒げて言った。「逃げろ」と、今も横で必死に言い続けている。でも佐久間くん、私には仲間をおいていくだなんて、できないよ…!


「おい、なまえ」

「…っ!」


ニヤリ、と笑う少年が私の名前を呼ぶ。びくりと体が条件反射のように震えた。生まれた時から備わっている本能というやつなのだろうか、私の脳は危険という文字が溢れてくる。
「逃げろ、なまえ…っ…」佐久間くんがまた言った。でも私は恐怖で体が動かない。ぺたりと座り込むと、倒れている佐久間くんの手をぎゅっと強く握った。

一方、少年は怯える私を見て一層笑った。ゆっくり、ゆっくりと私の不安を煽るかのように近づいてくる。
蛇に睨まれた蛙の如く、私は動けなかった。

少年が私の目の前まで来る。腕を強く掴み、こういった。



「俺と来い」
(いい人質になりそうだ)



End

mokuji / clegateau