やきもち


 

「…修二」



それは勤務が終わった夜中のことだった。自宅に帰ってきてからビールを飲んでテレビをつけ、少しの間それを見ていたときにチャイムが鳴りドアを開ければなまえがいたのだ。
まるで怒っているかのように眉間に皺を寄せる彼女は俺の名前を呟くとずかずかと歩を進め家の中に入っていく。頭の上に?マークを浮かべながらドアを閉めた。



「なまえ、こんな時間にどうしたんだ?」
「…」



ソファーに座りリモコン片手にチャンネルを変えるなまえは黙ったままテレビを見つめている。「なまえ、」もう一度名前を呼んでも結果は同じで、俺はなまえの目の前にしゃがみ込みなまえを見つめた。



「なまえ」
「っ!」



そうすればなまえは目を見開き動揺して目を反らす。俺を見ないって事は、俺に原因があるからなんだろう。他人に怒ってるなら、いつもの彼女ならすぐに恋人である俺が話し相手になるからだ。



「俺、何かしてしまったか?」
「……患者さんと」
「患者さんと?」
「…抱き合ってたじゃない」


きっと睨み付けるなまえ。少々顔を赤らめてるところがなんとも可愛くて、つい抱きしめればぽかぽかと背中と頭を叩かれた。



「な、なんで今抱きしめるのっ!」
「いや、可愛かったらさ、つい」
「つい、じゃないでしょ!だからあの患者さんなんなのっ!」



超能力で無理矢理俺から離れると、なまえは少し目に涙を溜めていた。真剣に怒ってたんだな、そんな事に気付かなかったなんて、俺もまだダメなのかもしれない。



「最後の診察か?」
「そう。修二が遅いから診察室行ったら……抱き合ってたんだもの」
「あれはな、向こうに抱き着かれたんだよ。なんなら、確認するか?」



接触感応能力も持ち合わせるなまえに手を差し延べれば、そんな必要ないと首を横に振られる。なまえは目に溜まった涙を拭うと、抱き着いてきた。



「……不意でももう誰にも抱き着かれたりしないでよね」
「分かってるよ」


_



mokuji / clegateau