飯よそい、解雇


 

「食事の用意ができましたよー!」


わたくしみょうじなまえ、今年で30歳になりました独身女です。
30になったというに恋人は愚か想い人さえもいない私は、今タソガレドキ城で飯よそいをしています。

私の幼なじみ、雑渡昆奈門が組頭を務めるタソガレドキ忍者隊には、くの一も女もいない為、食事は当番制で行っていたそうです。でも昆奈門がめんどくさいと言い出し、提案したのが飯よそいとして私を雇うことだった。


「はい諸泉くん、今日もいっぱい食べてね」


実家が定食屋という事もあり私は幼い頃から手伝いをしていた為に料理が得意だった。昆奈門にも「お前は飯よそいだけは一流だな」と嫌味を言われるくらいだ。まあ、何より私は料理するのが好きだし、定食屋の手伝いをしてたから栄養のバランスがとれる食事を提供する事ができる。食事から元気になってもらわないと、と私もこの仕事に一生懸命取り組んでいた。


なのに。

なのに!!




「なまえ、お前は今日をもってクビにする」

「…は?」

「聞こえなかったの?クビだってばクビ」


手でクビすぱーんなジェスチャーで理解を煽る昆奈門だが私からしたら不愉快でたまらない事この上ない。やっと自分にあったやり甲斐のある仕事につけたのに、なんでクビなんだろうか。幼なじみの昆奈門の事だから、私の考えてる事なんて知ってると思ってたのに。悔しい。


「なんでよ昆奈門、もしかして中毒者が出たとか、殿がお気に召さなかったとか?」
「どれでもない」
「じゃあ何よ」


真顔で怒りをこめてそう言えばやつははあとため息をついた。なんだこの馬鹿にしてるような態度は。


「私の嫁に来い」
「は?」
「ここで飯よそいもいいけど、私専属でやってもらいたいんだよ」


お前の作る飯は美味いからね、嫁にほしい

乏しい頭ですぐには理解できなかったけど、だんだんと情報が頭に浸透していき、それと共に私の顔はみるみるうちに真っ赤になっていくのだった。


「な、ななななな何を?!?!」
「本当に面白い驚き方だ。残念ながら本気だよ」
「えええぇぇ!!?!?」


いつも私をからかってくる昆奈門が真面目に言うものだから私は調子狂ってしまう。なんなんだ、何なのよもう!!


「何なのよもう!!って思ったでしょ」
「なんで分かるのよ!!」
「幼なじみ何年やってると思ってる?」
「…そう、です、ねー!!!」


またいつも通りにからかわれてムキになってそっぽを向けば、ぽんと頭に手を乗せられ、軽く撫でられる。


「本当かわいい」
「…るっさい」
「はやく嫁に来てくれないと何しちゃうか分からないよ」
「はぁ!?」
「冗談冗談。まあはやく返事ちょうだいよね」















***









「はーいご飯できたわよー!」


タソガレドキ城に今日もなまえの声が飯の香りとともに響き渡る。
この声が飯の合図というのにすっかり慣れたタソガレドキ忍者隊たちは、最近よりうまくなった飯を食べるのが楽しみだった。

というのも、


「なまえさん、お願いします!」
「尊奈門くん、今日もたくさん食べなきゃダメよ!」
「なまえさんの料理はおいしいですから、たくさん頂きます!」
「こら尊奈門、何人妻を口説いてるんだ」
「組頭!」


結局、雑渡に嫁いだなまえだったが、やはりタソガレドキの役に立ちたいと、家事をこなしながらも飯よそいとしてタソガレドキ城に働きにくることになった。

殿にも忍者隊の皆にも祝福され、ますますうれしくなったなまえは南蛮料理も作れるようになり、さらに腕をあげていた。


「今日もおいしい」
「よかったー」
「なまえ、食べさせてくれる?」
「はいはい、あーん」
「あーん」
「いちゃつくのは自宅でやってください!!」


今日もタソガレドキは平和です。



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mokuji / clegateau