大人の余裕黄昏時社の社長の娘であるなまえは今年で17、つまりは高校2年生になった。小さい頃から時たま世話をしてきた雑渡にとって彼女は娘のような大切な存在だし、また彼女自身も雑渡を父親のように慕っていた。 ある日、なまえの父である黄昏時社社長が海外にある支社に出張することになった。娘を溺愛する社長は、例え17になった娘といえど、家に娘一人置いていくのが心配でたまらなく、家に雑渡を寄越し、社長が日本に戻るまでの間生活を共にする事になった。 「雑渡さん、ただいま!」 今日も玄関を開ければ電気がついていて、キッチンから夕飯の匂いが漂ってくる事に安心するなまえ。夕飯は何かなとキッチンに向かった時、目の前にずんと巨大な壁が現れて思わずぶつかる。 「遅いよなまえちゃん」 「あ、雑渡さん」 「何時だと思ってるの」 火傷の後を隠すためか、いつもマスクをしている雑渡の表情は中々読み取れない。なので、黄緑のかわいらしいエプロンを着ながら彼が言うものだから、なまえはエプロンのことをからかってもいいのか分からなかった。もしかしたら、雑渡は怒ってるかもしれないのだから。 「雑渡さん、怒ってる…?」 「当たり前」 「…ごめんなさい」 こつんと頭を軽く叩かれて怒られてることを実感する。なんだか、最近は父親よりも雑渡の方が自分の事心配してくれてるな、となまえは思いはじめていた。父親がなかなか連絡してこないのは仕事が忙しいためで、雑渡と毎日顔を合わせるからそう感じるだけかもしれないが。 「少しは自覚した方がいい。女子高生ってだけで世の男たちは手だしたくなるものだから」 「じゃあ、雑渡さんが私に手出さないのはすごいですね」 「社長の大事な娘さんだからね」 そりゃ当たり前だと、なまえは自分に言い聞かせる。何を期待していたのか、何て言ってほしかったのか思い知らされてしまった。なんだか心が虚しくなったなまえは少しだけ悲しそうな顔をしてテレビを見つめる。 「そうじゃなかったら手出してるけどね」 「…え?」 「社長の娘に手だしたら、私クビにされちゃうかもしれないじゃないか」 「それは、つまり…?」 私が、社長の娘じゃなくて、雑渡さんがその社長の部下じゃなかったら、って事…? 「手出してもいいなら出すけど」 「だから、それはどういう…!」 「手出してほしそうな顔してるよ?」 「してません!」 火を噴いたように熱くなった顔をなんとか冷まそうと息を整えるがなかなか熱は収まらず、それを横目で見てくる雑渡に確証を与えてしまったようなものだった。 「ま、私ならなまえと付き合っても社長からお許し頂けそうだ」 「ざ、雑渡さん!!!」 これ以上言わないでください!! 強く言い放ったなまえの顔は先程より真っ赤になっていた。 _ mokuji / clegateau |