吉良イヅル


 


「今から進路希望調査表を配ります。提出は1週間以内です。まだ2年生になったばかりですが、もう2年生です。だいたいはみえてきてると思うので、皆さんよろしくお願いしますね」


1週間前のHR、担任の吉良先生にそう言われ進路希望調査表を配られた。
着々とクラスメートが提出していく中、私の調査表は真っ白。まだ、進路のことを考えられなかった。

親は大学に行く事を進めてきてる。でも将来の夢を考えると、専門学校に行くのもいいかもと私は考えていて、正直どっちにするかハッキリとは決まってないのだ。

−−「まだ2年生になったばかりですが、もう2年生です。」

憧れの高校生になり少し浮かれていた私は、1週間前の先生の言葉が胸に突き刺さった。1年なんてすごくあっという間だった。進路の事なんて考えずただ楽しい学校生活を送っていた私は少ししわくちゃになってしまった進路希望調査表を徐に折った。

出来上がったのは小さな紙飛行機、名前も何も書かれてないただの紙を飛行機にして空に放つ。ふわりと吹いた春風に紙飛行機は空を舞った。


「こらこら、身を乗り出して危ないよみょうじくん」
「あ、吉良先生」


開けっ放しだった扉から入ってきた吉良先生の手には透明のファイルがある。中には先程私が飛ばしたのと同じ進路希望調査表が入っていて、吉良先生がまだ提出してない生徒の元を回って回収してるのがわかった。


「今飛ばしたでしょう?」
「ええ。」
「そんなに嫌だったかい?」
「いえ、そういうわけじゃありません。」


紙飛行機にして飛ばしたのはただの現実逃避だとわかっていた。でも少しの間でもいいからそれと離れたくて投げ飛ばしたんだ。
吉良先生は嫌な顔一つせず、胸元にさしてあるペンとファイルの中から出した新しい希望調査表を私に渡す。


「たしか君の将来の夢って、栄養士だったね」
「はい」
「家庭科の成績はいいし、調理実習や部活動で作った料理はたしかにおいしいし、料理の腕もあるね」
「ありがとうございます」
「みょうじくんはいい奥さんになりそうだね。」
「はい…って、えぇ?!」
「書く事見当たらないから、僕のお嫁さんって書いてもいいんだよ?」


その言葉を最後に、一気に私の顔は熱気をまとう。何言ってるんだろう先生、いつもの先生じゃないしからかうにもほどがあるよ。


「先生、冗談がすぎます!」
「だって、あまりにも君が深刻そうな顔をしてたから、ついね…!」
「もう…」


でも、今の先生の冗談は少し役にたったかもしれない。




進路先の希望

○未定


将来の夢

素敵なお嫁さん




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おどおどなイヅルもいいけど、ヒロインより大人で少し余裕あるイヅルもいいかなあとか思って書きました。


mokuji / clegateau