事件簿 零 喫茶ポアロ
喫茶店ポアロは江戸川コナンが居候をしている毛利探偵事務所の入っているビルの1階にある。
珈琲とジャズにシャンソンが大好きな夫婦が趣味で始めた店だったので、開店当初から数か月前までは緩やかで穏やかな時が流れる店だった。
毛利小五郎は3階を借りて居たのだが2階の住人が国際結婚で海外移住する事になり、空き部屋になる事を聞き、警視庁を辞める時に入った退職金を使って2階部分を事務所として借りる契約をしたのが10年程前。
本当は1階部分を含めてビル毎買い取りたかったのだが、相談した仲介業者に中古のビルの相場を聞いて更に安く設定した買取価格で書類を作って交渉したら2階部分の契約もしビルから出て行ってくれてもいい、と断られた。
ポアロはそのまま営業をして、家賃も入らない、という条件を付け加えても交渉は決裂した。
後で弁護士である妃英理に決裂報告したら安く見積もり過ぎだと怒られて詫びをいれて、やっと2階を借りたのだ。
最も、賃貸という事で、空手の達人である蘭もビルを壊すような事はしないので其処は救われているのだが。
ともあれ、ポアロは繁盛していた。
料理上手で気立てのよいマスター夫婦と飽きの来ない会話。
ジャズにシャンソンにクラシック。
まるで大正ロマンのようにゆったりと流れる時。
マスターの珈琲と夫人の作る自家製ケーキに明るい笑顔の店員の梓のお陰で平日もそれなりに客は入って居たが、アルバイトの安室透が入ってから土曜日曜祝日は外に行列が出来る勢いとなった。
特等席はカウンターだが友人同士で安室を見に来る女性客の殆どはテーブル席に案内される。
安室が作るハムサンドと珈琲は世界一という女性客のツイッターは拡散されて、更に安室の人懐っこい笑顔にリピーターは順調に増え続け、今ではハムサンドは個数限定。
安室の顔を見て、あわよくば携帯電話とアドレスの交換、ライン登録、ラブレターを席にひっそりと置いていく客も居るがいずれも成功して居ない。
仕事上がりを待ち伏せて家を突き止めようとしても誰独り成功して居ない。
アルバイト希望を申出たりボランティアでもという履歴書持参の強者も居たが、安室には面接をしたり人事権は無いからと笑顔でいわれ、梓にも店長じゃ無いから個人情報は預かれない、と断られる。
学歴、職歴等などを書いた履歴書を置いてきても 忘れ物が届いてます、と交番から連絡が届くだけだ。
元々、マスターの実家は素封家で俗に言う働かなくても何たらのお坊ちゃんだった。
けれど美味しい珈琲を両親や兄弟、父親の会社の社員たちに飲ませてあげたいという一念で大学時代に喫茶店の経営学を学んだという変わり種。
大学時代にお菓子作りが趣味だという後輩と出会って、家を飛び出して、同棲を始めて一流ホテルに勤務をしながら料理教室にも通い、バリスタの勉強を始めて豆の焙煎迄始めた。
そこまで二人が真剣ならば、と二人の結婚を認めた両親は小さなー… といっても車が5台は置ける庭付の3階建ての家と一つと喫茶店が建てられる位の土地を買って引き出物とした。
その土地が喫茶ポアロの入っているビル。
儲け度外視で始めた店だけに売り上げは全く関係なかった。
それでも安室をアルバイターとして認めたのは夫人が自分の親の介護で店に出れる回数が少なくなり、マスターの方も実家の方で跡取りの兄の補佐的な仕事をせざるをえなくなってしまった為だ。
子供には恵まれなかったが、兄の末息子がポアロを継ぐと言い出した。
一族で会議をした結果、養子に迎えたら大学で経営学を学びつつ、週末はマスターの知人が経営しているレストランでバイトまでする熱心さだ。
マスターは、といえば豆の仕入れで世界を飛びまわり、喫茶の経営もしたその経験を生かして会社に入っている社員食堂を一新。
社員食堂を一新した時に1階の一部も改装して有名なコーヒーチェーン店とコンビニを隣接した。
土曜出社の社員もいるので営業時間こそ限定されるが写真食堂を使えるのだ。
更に土曜に限って社員の家族が入れるシステムを作り上げ、明るいサロン風にしてお子様ランチも提供。
それはTVでも取り上げられ、入社希望者がダントツに増え、緩やかであるが業績は上昇しているという。
その経営に関するノウハウは後を継ぐと言っている甥っ子に教え込んでいるが料理学校を卒業してもすぐにポアロを譲るつもりはない。
つまり安室がポアロでアルバイトができたのもタイミングが良かったからだ。
ポアロは開店当時からメニュー以外の撮影禁止で店員との写真は頼めない
それでも懲りないのが安室目当ての女子高生とバイトが出来る女子学生。
昔から来てくれる常連がポアロの客層が変わってゆっくり出来なくなったと去って行く半面、売り上げは鰻登りで上がる。
其れは喜ぶ事だろうがゆったりとした時間は無くなったと、かつての常連客が居なくなって、店長も夫人の実家と自分の家に顔を見せる事が多くなり顔を見せなくなってしまったと、梓は小さな溜息を吐いた。
マスターはポアロの方を疎かにする訳でもなく、自宅に誂えた焙煎室で炒って来た豆を専用の缶に入れる。
一度、安室が珈琲を淹れる手伝いをしようとしたら手をだすなとこっぴどく怒られた程の凝り性だ。
何でも器用にこなす安室だが、豆の仕入れと焙煎は梓にもさせない為に決められた量の当日分が無くなったら売切れで炒れる事が出来ない。
良い豆だからと市販の豆を使おうものなら、ばれたら即日解雇を言い渡されている程だ。
(マスターの豆がそこら辺の店のより美味しいのは確かなんだが、売り切れたからと勝手に焙煎した豆を持ち込む事は出来ないからな… そろそろマスターが豆を届けてくれる頃なんだが…)
安室は次にマスターがきた時に豆の量の増加を頼もうと色々メモを取って当日分の量を確認して溜息を吐いた時。
「随分久しぶりにいらして下さったのに、もうお帰りですか?」
大きなボストンバックを持った男性に梓の声が耳に入った。
杖を付いた夫人と仲良く連れ添って来た夫婦が入って来た時はまだ静かだったが、あっという間に安室目当ての女性軍があれよあれよとやって来たのだ。
きゃあきゃあと安室に話かける女性軍に安室はそつなく笑顔を返す
そして黄色い歓声が上がる。
「悪いね梓ちゃん。 イケメン目当ての女子高生の声も女子大生の香水も、珈琲の味を損なうだけなんだよ。」
「…… お口に会いませんでしたか?」
半分以上残したカップを見て眉を下げる安室。
「子供達の賑やかさなら歓迎だけど、香水付けて香りが味が、と蘊蓄垂れるのがポアロのファンには頂けないだけですよ。LPで流れていたジャズもクラシックもいつの間にか消えて有線の賑やかなアイドルソングやロックになってしまって。」
「す、すいません! 若いお客様達が増えて、流行歌が良いとリクエストが来るようになってしまって、それでマスターに相談して有線を… あの! すぐにジャズのチャンネルにー…。」
「いや、構わないよ。私たちはマスターが焙煎して炒れてくれる珈琲を、マスターが掛けてくれるLPレコードのジャズやクラシックを聴きながらゆっくり味わって飲みたかっただけだ。マスターは私達が何も注文しなくてもポアロブレンドを淹れてくれた一流のバリスタだったからね。―… 君の退院祝いにポアロの珈琲をと思ったんだけど残念だったね。」
「いいえ。 マスターも実家のお仕事があると言ってましたもの。 飲めないのは仕方ない事ですよ。 何年かしたら息子さんが入れるポアロ珈琲を飲めるでしょうし」
「あ、あの! すいません。 奥様が入院してたなんて…! あのっ、 早ければ今日か明日にもで店長が来る予定なんで、店長の水出しを御用意するように頼んでおきます。 彼も私も<ポアロ・珈琲>を店に出す許可をまだ貰えないので」
梓にはかつての常連に頭を下げる事しか出来ない。
「店長の水出しはほぼ幻の一品だからね。 それは仕方ない事だよ。 それに明日から私も忙しくなるからこれるかどうか。 会計をお願いできるかな」
「そう、でしたか…。 あ、いえ。 今日はお代は入らないです。 昔から通って下さるお客様に満足できる珈琲をお出しできなかったのはこちらなので、店長にバレたら怒られますから」
「だが、それでは商売にならないだろう」
「いえ! いいんです。 お気になさらずにー…」
「なら、梓ちゃんの言葉に甘えるとしようか。 何処かで食事をして帰るかい?」
「お食事といえば、アル・アマーニホテルに入ってるカフェ・アルテミスのトマトソースパスタが美味しいと評判だそうですよ。 パスタの話をしてた時に看護師さんに教えてもらったのですけどね。 なんでトマトソースなのかって聞いたらシンプルで、トマトの味が生きているっていうんですよ。上にかかっているチーズは粉じゃなくてフレーク状なのがでてくるのですって。 ほら、一昨日見舞いに来てくれた 陽子さんもその場にいたんだけど、行った事があるって言い出してスマホの画像を見せてくれたの。 来月の貴方のお誕生日と私の退院祝いでアルテミスに皆で行きましょうって誘ってくれて。 月変わりのチーズケーキが人気だそうですよ」
「そうかい? アル・アマーニなら仕事でホテル前を何度も通ってるからすぐわかる。なら、我々が一足先にそこに行ってみようか? でも退院したばかりでパスタは大丈夫かい?」
「パスタは一つにしてもう一つ、リゾットとかあるか聞いてみましょうか?」
「あぁ、そうだね。此処ならタクシーもすぐにつかまるだろうし。」
ゆっくりと妻を労わるように、深い笑みを浮かべる夫に頷く婦人。
「帰るなら安室さんに謝りなさいよ!」
「ほーんと! 酷い言い方しないでよ! 私たちの方があんた達よりよっぽど来てるのに!」
「トマトソースパスタがいいなんてねぇ! 安室さんのハムサンドの方が数倍美味しいわよ!」
「今時LPとか、ジャズとかクラシックなんて化石!」
女子大生の独りがドアを開けようとした夫婦の背中に心無い言葉をなげ付ける。
「安室さんの珈琲残す何て!」
「入院してたなら年で舌が麻痺してるんでしょ! 安室さんなら店長なんかより美味しい水出しを淹れられるわよ」
「私たちのポアロに来て、文句言うなんて! ね、安室さん、梓さん! 此奴ら出禁にしようよ! 写メって出禁リスト作ろう!」
「安室さんの魅力解らない人は出禁!」
「賛成」
ぎゃいぎゃい喚くのは安室のファン
「五月蠅い子たちですねー…」
安室は溜息を吐くと人懐っこい笑みを消して数名の客を睨み付ける
「ポアロに出禁するリストを作成するなら出禁1号は君たちです。 俺はこの店でガールハントする気は有りませんからナンパ目的なら来なくて結構です。むしろ迷惑ですよ」
「安室さ…?」
「俺は、礼儀知らずは嫌いです。 人の嗜好に口出しするような女性に靡くと思うなら化粧室で自分の見苦しい顔を見て来ると良いですよ」
「!!」
安室は夫婦に向かって笑みを見せる。
「このご夫婦が仰ったカフェ・アルテミスはスイスが本店です。 実はアルテミスには何度か行った事があるので知ってるだけですが、リゾットも数種類あって頼めば柔らかめにもしてくれますから店員さんに仰ると良いかと思います。HPをみればわかる事ですが、もともとはアレルギーを持って産まれた自分の子供の為に安心して食べられる食事やケーキをと願って作ったのが発祥となったお店です。 それにご主人の言葉は間違って無い。 俺も、マスターの珈琲は一流だと思ってます」
「ー……」
「マスターの珈琲を飲んだ事の無い君達に、このご夫婦を批判する権利は有りません。メニューにはポアロの名前を付けた珈琲は店長しか淹れられない。だから、店長が店にいない日といる日のメニューが違うし、値段も違うんです。」
安室は足を止めた老夫婦に近寄るとペコリと頭を下げた。
「折角のお時間を台無しにして申し訳有りません。彼女達にはキツく言い聞かせておきますので、お怒りが収まったらまたいつかいらして下さい。教授」
「ー……」
「確かに僕の珈琲は店長のより味がまだ粗いです。 貴方方はブラックを注文したのに一口飲んで溜息を吐かせてからほんの少量ですが砂糖を入れてました。 店長の味を知っている人は皆さん同じことをします。」
「気が付いてたのかい?」
「はい。 これまで梓さんが其れを知って黙っていてくれた事も」
「そうか。 ならば店長の味と何が違うか、自分で考えてみるといい。」
「バリスタの資格を取るのは出来て、それなりの味を出す事は出来ます。ですがお客様の体調を考えて炒れる事はまだ出来ません。口の肥えたお客様の舌を誤魔化す事は出来ません。 長く来て下さってる方しかわらない事ですが、改めて指摘されると勉強になりました。」
カラン、とドアを開ける安室。
「―…どうぞ、足元にお気を付けて。」
夫婦はそれ以上何もいわずに寄り添うように立ち去って行く。
その背中に安室はまたひとつ、丁寧に頭を下げた。
「で、でもさぁ、只のトマトソース、だよねぇ?」
「大蒜、玉ねぎ、トマトで作る、普通のソースだよね? 退院祝いにそんなのしか食べれないって事?」
懲りずにひそひそと話す女子大生
「君達は行った事がないでしょうけどね。 俺はカフェ・アルテミスのトマトソースパスタを勧めた看護師さんに同意しますよ。。それにあのご主人は時折TVにも出ていますよ? 知らないんですか?」
「ぇ!! ウッソ!」
「ご主人は放送大学の教授で東都大学の文学部の博士でらっしゃいます。 奥様とは50年以上経ってもとても仲が良い評判の教授です。」
(簡単なソースだからこそ手抜きはさせない。 ベースとなるトマトソースやコンソメスープはキューブを使わずに手間暇かける。それがアルテミス。)
「やっばぁ〜〜 お姉ちゃんに怒られる」
「あんたのお姉ちゃん東都大?」
「… 文学部。 すっごいお世話になってる教授がいるって言ってたけど、まさかかも…」
「あちゃぁ…」
黙り込んで頭を抱える女子高生。
そして出禁は御免だとばかりに傍観者を決め込む他の女子大生と女子高生。
「さて、君達の顔は覚えました。 さっさとポアロから出て行きなさい。 君達にはインスタントがお似合いですよ」
「安室さん? 本気ですか? 一応お客様なのに」
「勿論本気です。 僕は料理が好きですし、珈琲も好きですが、マナーの悪い人の為に作りたくはありません。 僕はアルテミスのトマトパスタのファンですが、梓さんが作るパスタランチも好きですし。 パスタの美味しいお店もケーキや珈琲の美味しい店も沢山ありますからどのお店のが一番、なんて決められませんけどね」
「そうですね」
安室の言葉にしょぼん、となる女子学生たち。
「ー… 安室の兄ちゃん」
声を掛けてきたのは上にある毛利探偵事務所の居候であるコナン
「コナン君? どうかしたかい?」
「え…っと、あのね、蘭姉ちゃんがサンドイッチ残ってるか聞いてきてって。」
「ん? あぁ… あと5〜6人分位ならあるけどー… 」
「じゃあ、蘭姉ちゃん園子姉ちゃんの分、取っといてくれる? 直ぐにくると思うから。 世良の姉ちゃんは梓姉ちゃんのパスタランチを食べたいんだって」
「3人だね? 分かった。 彼女達はもう帰る所だから席はすぐ作れるよ。今日は勉強会でもしてるのかい?」
「来週早々、英語のテストなんだって! 世良の姉ちゃんは帰国子女で英語得意だから」
「あら、大変ね。 コナン君は?」
「僕もこれから灰原んちで友達と宿題するんだ」
「そっか。でもコナン君は頭いいからすぐおわるんじゃないか? 学校にいかなくても成績は音楽以外はとてもいいって蘭さんがー…」
「あら、コナンくん、音楽は苦手?」
「うっ… じゃなくて、 えーっと、歌とか聞いてるとすぐ眠くなっちゃって。」
「歌? 確か、とっても歌の上手な子が転校してきたって蘭ちゃんから聞いたわよ」
「っえ、あ、白銀さんの事だよね! アメリカの聖歌隊に居たって云ってた。」
「聖歌隊って普通は男の子だけじゃ…?」
「白銀さんが暮らしてた州は関係ないみたいだよ? ミサの時は合唱団みたいに歌ってって、チャリティコンサートに何回も出場して入賞も優勝もしている聖歌隊だって言ってたもん。」
「すごっ… じゃあ、その子もお勉強会に来るの?」
「どうかなぁ? アレルギーがあって少し躰が弱いから来ないと思うよ」
「アレルギー?」
「薬を飲んでて、その関係で牛乳とかの乳製品の殆どが食べれなくて、肉類も殆ど食べないって言ってた。 博士が用意するのはいっつもショートケーキだから食べれないって」
「じゃあパフェとかは」
「パフェなんて食べたらアナフィラキシーショックで命にかかってきますね。 食べられないのは乳製品と肉類だけかい?」
「んー… 詳しくは聞いてない。けど、給食の殆どはお弁当だよ。元太に比べると半分以下だったよ。」
「元太君と比べたら大概の子は小食でしょう?」
「あはは、そうだね。少しでも食べ過ぎると心臓に不可が掛かって気持ち悪くなるって言ってた。」
「可哀想… なんか美味しいケーキとかないのかしら?」
「給食の小母さんからアレルギー対応のマクロなんとかっていう美味しいケーキ屋さん教えて貰ってたよ」
「マクロビオティック、の事だね? 生クリームの変わりに豆乳とかバターの変わりにオリーブオイルとか使う健康食的なケーキだよ。」
「へぇ…流石安室さん、物知りですね」
「ホント!」
コナンは成績の話がそれた事にほっとする
「僕もちょっと考えてみるよ。マクロビオティックには以前から興味があったんだ。」
「あ、それから、このおねーさんたち、随分反省してるようだから、赦してあげたら
? すいぶんとしょぼくれてるし」
「反省、ですか? 今時の女子高生が僕の言葉位で反省するとは思えませんけどね」
チラリ、と女子学生に視線を送ればビクリ、となる。
「安室さんがポアロのマスターを尊敬してるのは知ってる。でも、だれにも間違いはあるんだから1回は許してあげてもいいと思うよ、って小五郎のおじさんが前に言ってた」
「1回は、ですか。」
「だって、騒々しいのが嫌いとかなら園子姉ちゃんはとっくに出禁対象でしょ? いっつもここで ”恋バナ” とかしてるし! 安室兄ちゃん イケメン店員って有名になっているんだから、そこらへんもー…「コナン君」 …っって!?」
ゴン、と頭に拳骨を食らうコナン
「僕はそれなりの顔立ちっていうのは十分自覚してます。 でも、カッコイイ彼氏が欲しいだけの女子学生と付き合う気はありません。 僕には永遠の女性がいるんです。」
「えっ! 永遠の女性!? 安室さん、好きな人がいるんですか?」
「僕のレベルでは高根の花で、一生かかっても手は届きませんけどね(―… エレーナ先生。 先生への想いは生涯届かないけれど、僕は、先生と出会った日本を守ります)」
「へぇ… 安室の兄ちゃんが手が届かないって… (あの安室さんにここまで言わせる人ってー…) どんな人?」
「小学生に話しても仕方無い事ですよ。 他人には理解できない想いというのはあるんです。 コナン君に隠し事があるようにね?」
「!! じゃ、じゃあ、僕行くね! 蘭姉ちゃんのランチ宜しく!」
にこり、と言われてコナンはトートバックを片手に走っていく。
「さて、と梓さん。 空いてる席を片付けてくれませんか? 蘭さん達の席を作らなくてはなりません。」
「そ、そうですね」
安室は固まった儘の女子学生を見て小さな溜息を吐く
「俺は商売柄、人の顔を覚えるのは得意です。 教授ご夫妻に暴言を吐いた君達はイエローカード1枚。 仏の顔も三度まで、 という事がありますから 今後何かしでかしたら、3回目のイエローカードになったら ”出禁” です。」
「ー…」
「他のお客様のご迷惑です。 荷物を持ってお帰り下さい。」
ガタガタと動き出す女子学生。
「君達も。イエローカードにならないからと安心しないように。 テーブルの上に履歴書や電話番号をおいておいたら彼氏募集でポアロの掲示板に貼り付けます。」
ビクッと顔色を変えてガサガサ動き出す客がいて、梓はくすりと笑った。
☆20〇〇年△月△日 天気 晴れ
今日は少し大変な日だった。
教授ご夫妻の怒りが解けてまたポアロに来てくれればいいと思う。
小うるさい女子学生たちには厳しくしたが、俺も以前のような喫茶店に戻ってほしいと思うから。
女子高生騒ぎで店長に明日中にブレンド用の珈琲豆が切れるのを連絡するのを忘れてしまった。
メールはしておいたが、豆を届けにきてくれるのは明後日の定休日になるだろう。
明日のやり繰りが少し大変だが、やるしかない。
後日談
「安室さん、最近はマナーの良いお客様が増えましたね。 以前のお客様の1人が、 雰囲気が少し前のようになってきたって」
「少し荒療治だったかもしれませんが、成功したようですね。彼女達がSNSで拡散したたんだと思いますよ」
「かもしれませんね! でも安室さんに、意中の女性が居たの、知りませんでした!」
「ふふっ… そう、見えますか?」
「え?って! 女性客を黙らせる為の嘘だったんですか!」
「さぁ? どっちだと思います?」
「―…」
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