生まれた時からずっとそばに居て、成長するにあたって私はずっと彼の後ろを追いかけてきた。
いつか追いつきたい。
追い抜いてやりたい。
そう思ってひたすら追いかけてきた。
バレーボールを始めたのだって彼の影響。
勉強も真似して頑張って良い成績を取ってきた。
私でも出来ることは何でも真似した。
でもやっぱり追いつけなくてーー。
むしろその背中はどんどん遠くへ行ってしまった。
気付いた時には私は彼を追いかけるのを辞めた。
そして好きになったバレーボールも辞めた。
目標を失ってしまった私は、なんにもない。
ただつまらない日常を繰り返すようになっていた。
時が流れて、私は今日高校の入学式を迎えた。
真新しい制服に身を包み、校則違反しない程度に化粧をし、鏡の前で変じゃないか再三チェックする。
階段を降りてリビングに行けば、母も入学式に来るため他所行きの服装にいつものエプロンをしていた。
「あら、おはよう。似合ってるじゃない!可愛い〜!」
ちょっとそこ立って!なんてはしゃぎながら携帯を私に向ける。
『ちょっと、早くしないと遅れちゃうんだけど!』
文句を言う私をよそに、母はパシャパシャと音を立てながらいろんな角度で私を撮影してくる。
つい先月の卒業式でも「撮り納めよ!」なんて言って同じ事をしていたのを思い出す。
小さくため息を漏らしながらも母の撮影会に付き合う私は満更でもなかった。
新しい環境、新しい生活がスタートするのだ。
心には未だぽっかり穴があっても、多少は高揚感を持ち合わせている。
画面に映った私を見てキャッキャしている母を横目に、チラッと食卓に置かれた“食べ終わった食器”を見た。
あぁ、こんな日でも彼はもう学校へ行ったようだ。
それもそうか、毎日毎日朝練で私が起きる時間に家を出ているんだ。
『お母ちゃん、早くしないと本当に遅れちゃうよ。』
「あら!?やだ〜、あんたも早く朝ごはん食べちゃいなさい!」
『え〜、お母ちゃんが写真撮影なんかしてるからじゃんか』
「良いじゃない晴れ姿なんだから!それよりお母ちゃん入学式終わったらそのまま保護者会なんだけど、あんたどうする?待ってる?」
『あー、分かんない。連絡する。』
「わかった。じゃぁ私も終わったら連絡入れるわね!」
パタパタとスリッパを鳴らしてキッチンに戻る母。
私も取り敢えず朝食を済ませてしまおうと思い、用意された朝食を頬張る。
出発まで後20分。
お母ちゃん、まじ完全に想像です。
ちなみにお父ちゃんは単身赴任で東京にいる設定。