第1話「雀と鴉の兄妹」

鬼。主食を人間とし、人間を殺して食べる化け物。
身体能力がとても高く、傷などもたちどころに治る。
あるたった一人の鬼の血を取り込んだ人間が変わり果てた姿である。つまり鬼とは元人間なのだ。
そしてそんな鬼を退治するのが鬼殺隊と呼ばれる一つの組織であった。
彼等は呼吸法という独自の技と特殊な刀のみで鬼と渡り合う鬼斬り集団。
そんな彼等のトップに立つ産屋敷に代々仕えてきたのが鎹一族であった。
鎹一族とは、鬼殺隊の連絡手段である鎹鴉の一族である。
彼等は鬼ではないものの、鴉に変身するという特殊な体質を持っていた。
そして鳥と言葉を交わす能力と、知性の高い鴉を育てる才能を持っていた。
故に、彼等は鎹鴉を育て、また彼等自身も鴉として鬼殺隊の情報を伝達し続けてきたのである。
これは、そんな鎹鴉一族の血を引くとある兄妹の物語である。

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バサバサバサ
「カー!手紙!手紙!左近次から手紙きたー!」

ここはとある森の中。
任務で一体の鬼の討伐をしに来ていた清隆は、自身が育てた自慢の相棒である鎹鴉が持ってきた手紙に不思議そうに首を傾げた。

「――手紙?先生からの手紙なんて珍しいな。どうしたんだろ?」
「チュン!チュチュン!(お兄ちゃん読んでみて?もしかしたら緊急用なのかも。)」
「そうだな、小羽。えーと……何々。」

兄の肩に乗る小さな雀は、彼の妹の信濃小羽である。
本来であれば鴉に変身する鎹一族の血を引く小羽であるが、何故か小羽だけは雀に変身してしまうのである。

『――拝啓。信濃清隆様、小羽様。
二人とも元気にやっているか?挨拶もそこそこで悪いが、お前たちに報告しておくことがある。半年前から、ある少年を弟子として育てている。
竈門炭治郎というその少年は、家族を鬼に殺されたらしい。たった一人生き残った妹は鬼に変貌している。……が、彼等兄妹を助けた義勇の判断で、妹は始末することなく生かされている。義勇は妹は人を傷つけないと判断した。
私もその言葉を信じてみようと思う。
もしも禰豆子が人を傷つけたならば、私と義勇。そして炭治郎は腹を切る覚悟だ。
だから、私の弟子であるお前たちにはそれだけは伝えておこうと思う。
鱗滝 左近次』
「――どう思う?」
「鬼に変貌した人間が安全な訳ないじゃない。先生と義勇さんは一体何を考えて……」
「……一度、会ってみるか?その兄妹に。」

清隆の言葉に、小羽は即座に頷いた。

「勿論。先生たちの言葉は信じたいけれど、私は人を喰わない鬼なんていないと思う。」
「だな。この目で確かめないことには、先生が心配だ。」
「じゃあ、決まりだね。丁度任務も終わったばかりだし……」
「そうだな。……行くか。先生の所へ。」

二人は同時に頷くと、その体を変化させていく。
一瞬にして一羽の鴉と雀が現れる。
すると、その二羽の鳥たちは空へと羽ばたいていったのである。

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