イチャついていたら兄に見られた

・二人は恋人設定
・善逸と小羽が蝶屋敷でイチャついてる(キスしそうorキスしてる)のを見て飛びかかりそうな兄を止める炭治郎のリクエスト






「善逸くん……」

「小羽ちゃん……」


互いに熱を孕んだ目で見つめ合い、名前を呼び合えば、愛しさが込み上げてくる。
愛しさに突き動かされて、両手で顔を包んで口付けた。
柔らかい唇、その厚みを確かめるように食んだ。
たった一度軽く触れると、そっと名残惜しげに唇を離す。
じっと小羽ちゃんの顔を見つめると、それに気付いた彼女がほんのりと熱に浮かされたような顔で俺を見つめ返した。


「小羽ちゃん、可愛いね。」

「……もう、またそういうこと言う。」

「だって本当のことだし。」

「んっ」


噛み付くようにまた小羽ちゃんの唇に触れる。
今度は何度も何度も、角度を変えて口付ける。
合間に漏れる小羽ちゃんの吐息が、段々と湿って艶っぽくなるのを聴いた。 頭の芯が痺れて、理性の糸が緩んで溶けていくような心地良さを感じる。
何度もしつこく口付けを続けていくと、小羽ちゃんが苦しそうに薄く唇を開く。
その唇を見て、喉だけじゃない渇きを潤そうと、その奥にある湿った赤い舌に自分の舌を伸ばして舐めた。
身を引こうとする小羽ちゃんの頭を後ろから掌で押し付けるように俺の方へと倒す。
逃げる舌を追い掛けて絡めると、柔く温かいその感触にうっとりとする。
ぴちゃり、と雨音が跳ねたみたいな水音が二人っきりの室内に響いた。


「……んんっ!まっ!……ぜん……ふっ……」

「……っ、はっ……」


小羽ちゃんが何か言おうとする言葉ごと飲み込むように口付けを深くする。
何て気持ちが良いのだろう。 温かい、柔らかい。唇とはまた違った柔さと濡れた感触。
もっとずっと、こうしていたいけど。 小羽ちゃんの息遣いが苦しそうになっていくから、名残惜しいけどゆっくり離れた。
離した互いの舌先から、唾液の糸が伸びる。そっと唇を離してやれば、ぷつりと糸が切れて小羽ちゃんの唇に垂れた。
艶々と濡れる柔らかそうな唇。思わずそれに釘付けになって、何も考えずにペロリと唇を舐めた。


「……んっ」

「……はぁ……甘い。」


口付けの余韻に浸っていると、小羽ちゃんがぐったりと俺の胸に倒れ込んできた。
咄嗟に抱き締めれば、俺の胸に顔を埋めてスリスリと子猫のように甘えてきた。
ほんのりと耳まで赤くなった顔のまま、小羽ちゃんも俺の背に両腕を回してぎゅうっと抱きついてくる。
可愛い。すごくすごく可愛い。
普段甘えて欲しいと思っていても、俺を甘やかすばかりで中々甘えてくれない小羽ちゃん。
そんな彼女の方からこうやって甘えてきてくれるなんてと、俺はじんっと感動してほんのりと涙ぐんだ。
いいだろうか。このまま雰囲気に任せてしまっても。
甘い空気のまま、流されてしまっても。
ぎゅっと小羽ちゃんを抱き締める腕に力を込めれば、彼女もまた俺に回す腕に力を込めた。


「……善逸くん、大好き。」

「うっ、わ……小羽ちゃん、それは……」


甘えるように擦り寄ってきながら、可愛らしい甘い声でそんなことを耳元で囁かれた。
もう無理だ。限界だ。
もう、小羽ちゃんの音しか聞こえない。
彼女の息遣いやドキドキと高鳴る鼓動、俺を好きだと、愛してると全身全霊で伝えてくる心音。
何もかもが愛おしくて、小羽ちゃんの音しか聞きたくない。
小羽ちゃんの音にだけ集中したい。


「……っ、小羽ちゃん……」


小羽ちゃんを抱き締めたまま、ゆっくりと押し倒す。
頭を打ち付けないように手で支えながら、優しく組み敷けば、ドゴドコと俺の心臓の音が大きくなった。
小羽ちゃんもすごくドキドキしてる。でも決して嫌がってない。
寧ろどこか期待しているようなそんな欲情の音をさせて、俺の熱が下腹部に集まってくる。
いいよね?いいんだよね?
俺はそっと彼女の羽織に手を伸ばした……その時であった。


ガラッ

「小羽〜〜ちょっと頼みがあるんだけ……ど…さ……」

「「あっ!」」


ガラリと勢いよく襖を開けて入ってきたのは、小羽の兄である清隆であった。
彼は襖を開けて目に飛び込んできた光景に、時が止まったかのように固まる。
同じく彼の突然の登場に一瞬固まってしまった善逸と小羽。
三人の視線が合わさり、目が合った瞬間、時が動いた。


「……何……してんだ?」

「ひぃ!」


清隆の纏う空気が一瞬にして暗く重いものに変わり、地の底から這いずり出してきたかのようなとても低い声でポツリと一言だけ呟いた。
それだけでもう、善逸の顔は一瞬で青ざめた。


「お、おおお、お義兄さん!!ここ、これはぁ!!」

「……誰がお義兄さんだって?」

「ひぃぃ!!音が!!音が凄いことになってるよぉぉぉ!!怖い!!怖いからぁ!!」

「おっ、お兄ちゃんあのね!」

「おう、小羽は黙ってろ。今すぐこいつの頸を刎ねてやる。」


清隆は腰に提げていた刀に手を添えると、スラリと慣れた動作で抜刀した。
キラリとよく研がれた刀の刀身が輝きを放つ。
獲物を早く狩りたいと、まるで興奮しているかのようだ。
それに殺されてはたまらないと、善逸は全力で叫んだ。


「んぎゃぁーー!!やめてやめてー!!」

「善逸……じっとしててくんね?一応友達としては、成るべく苦しまないように殺してやりたいんだわ。」

「いやいやいや!!まず殺すなよ!!友達をさぁ!!殺す以外に選択肢ないのかよ!!?」

「ねぇよ。」

「あっ、ソウデスカ。いーやー!!本当に殺されるうぅぅ!!」

「うるさいぞ善逸!何やって……って清隆!!?何してるんだ!!」


その時、天の助けか、善逸の悲鳴を聞きつけて炭治郎が駆け付けた。
部屋に入るなり目の前で繰り広げられる光景に、一瞬ポカンとしてしまったが、すぐに炭治郎は清隆を羽交い締めにして彼を止めようとした。


「炭治郎放せ!!俺は今日こそこいつを殺さないとならないんだ!!」

「ダメだ!!よく分からないが兎に角ダメだ!!」

「ああ"っ!!よく分かんねーなら邪魔すんな!!」

「兎に角落ち着け!!」

「ひっ、ひぃぃ!!」

「あ〜〜〜〜もうこれ、どうやって収拾つけたらいいの?」


善逸は怒り狂う清隆にすっかり怯えて、情けないことに小羽の背中に隠れているし、清隆は兎に角怒り心頭だし、炭治郎は今にも清隆に頭突きを繰り出しそうである。
訳が分からなくなりつつあるこの状況に、一人だけ冷静な小羽は頭を抱えるのであった。

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