鎹鴉会議

・柱の鎹鴉たちの性格はオリジナルのものになっています。
・柱の鴉たちはそれぞれ恋鴉、蟲鴉、炎鴉などと柱の階級での名で呼ばれます。
・伊之助の鴉はオリジナルで「黒羽丸」という名になっています。




鎹鴉。鬼殺隊員一人につき一羽与えられ、彼等の伝達、報告や情報収集などのサポート役として活躍してくれる相棒のような存在である。
そんな鎹鴉たちは、時折こうして集まって、ひっそりと集会を開くことがあった。
これはそんな彼等鎹鴉のそんな集会での様子を覗いた物語である。


「へぇ〜、蜜璃さんと伊黒さんが二人で食事にねぇ〜。あの二人ってやっぱりそう言う仲なのかな?」

「どうかしら?でも蜜璃様はとっても幸せそうで……恋ってやっぱり素敵ね。キュン!」

「はっはっはっ!恋鴉は相変わらず恋話が好きだな!」

「そ、そういう炎鴉は相変わらず主人に似て元気ですね。」

「ああ!!なんてったって杏寿郎の鴉やってるからな!!そう言う蟲鴉ももっとハキハキと元気に話せ!!いつもオドオドしているではないか?」

「ぼ、ボクはこのままでいいです。しのぶ様だって何も言わないし。」

「はっはっはっ!そういうものなのか?」

「若いのぉ〜〜、羨ましいのぉ〜〜」

「水鴉おじいちゃん……まあ、蟲鴉には蟲鴉の調子があるんだと思うし、そっとして置いてあげたら?炎鴉。」

「む?そうなのか?小羽殿?」


小羽が炎鴉と蟲鴉の会話に割って入って炎鴉を宥めていると、集会場の隅っこでブツブツと何やらどんよりと黒い影を背負って落ち込んでいる鴉が1羽いた。


「(ブツブツ)どうせ僕なんて食用だよ。柱の鎹鴉たちと違って活躍できてないし、僕なんて主人に非常食としてしか見てもらえないダメ鴉なんだ。(ブツブツ)」

「黒羽丸は相変わらず後ろ向きだな。」

「うん……伊之助に二度も食べられそうになってから、ますます暗くなったよね。可哀想に。」


清隆と小羽が同情的な視線を向けるこの妙にネガティブな鴉は、伊之助の鎹鴉である。
黒羽丸は過去二度に渡って主人である伊之助に食べられそうになり、元々落ち込みやすい性格により磨きが掛かっていた。
彼のことはそっとしておこう。


「だからよぉー!俺様のマスターは今日も派手に鬼の頸をぶった斬って、派手に活躍したんだわ。マジで俺のマスターかっけぇよ!!流石柱の中でも一番カッコイイ男だぜ!!」

「バカ言うんじゃないわよ音鴉!!柱の中で一番強くてカッコイイのはうちの子よ!!なんてったって無一郎は天才なのよ!!」

「はあ!?おいおい、何寝ぼけたこと言ってんだ?霞鴉。あんなチビのどこがカッコイイんだよ?」

「なっ!無一郎がチビですって!?あんたのとこの忍くせに無駄に着飾って派手にしてるデカブツよりはずっとマシよ!!」

「はあ!!?俺のマスターをバカにする奴は例えレディでも許せねぇな!!」

「上等よ!!表に出なさい!! 」

「おいおい喧嘩するなよ!」

「止めるんじゃねーよ清隆!いくら鎹一族のあんたでも、こればっかりは止めないでくれ!なんてったって大好きなマスターの悪口を言われたんだぜ!?」

「最初に言ってきたのはあんたでしょうが!!」

「ちょっと二人共落ち着いて!君たちが宇髄さんと無一郎くんが大好きなのは知ってるから!どっちの相方も凄いってことで!それでいいじゃない?」

「「良くない(ぜ)わよ!!」」


小羽はお互いの主人が大好きなあまり喧嘩を始めてしまった二羽をなんとか宥めようとしてみるが、どちらかの主人が一番でないと納得がいかないらしい二羽は、怒り心頭に小羽に噛み付いてきた。


「うちの子が一番凄いのよ!!なんてったってあの子は始まりの呼吸の剣士の血筋だし、たった二ヶ月で柱になった天才なのよ!!誰がどう見てもうちの無一郎が凄いわよ!!」

「ああ、うん。そうだね。確かに無一郎くんは凄いよね。」

「俺のマスターだってなぁ!元忍だし、嫁さん三人もいるし、派手でカッコイイんだぞ!」

「はん!それが何だって言うのよ!ただチャラチャラしてるだけじゃない!」

「おいおい霞鴉。いくらレディでもそろそろ本気で怒るぞ?」

「はん。あんたみたいな日本の鳥のくせに変に西洋かぶれしてる奴に怒られてもせーんぜん怖くないわよぉ!!」

「なんだとぉ!」

「わぁー!!もういい加減にしろよぉーー!!」


喧嘩は収まる所かどんどん白熱していく。
ちっとも仲直りする気のない霞鴉と音鴉に、清隆と小羽は困り果てる。
そんな喧しい連中を他所に、少し離れた木の上で小羽の鎹鴉である黒姫と、清隆の鎹鴉である天王寺松右衛門はやれやれと呆れた様子でため息をついた。


「まったく、うるさい連中だな。折角久しぶりに嫁と一緒に居られるってのに、アイツ等のせいで台無しだ。」

「ふふ、まあいいじゃないですか。小羽様たちも毎度集会の度に大変そうですね。手伝った方がいいでしょうか?」

「放っておけ。それよりもこの後二人で何処かに行かないか?」

「あら、デェトのお誘いですか?」

「いいだろ?今日は仕事も入ってないし、久しぶりにおまえとゆっくりしたいんだ。」

「まあ、あなたったら。」


松右衛門の言葉に黒姫はクスクスと嬉しそうに笑い声を上げる。
とある山奥で、今日は特にうるさく鴉たちの鳴き声が響き渡る。
賑やかで騒々しい集会はまだ始まったばかりである。

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