第157話「当人たちは何も知らない」

「――さて、自己紹介も終わったし、今日の活動内容だが……」
「……そういえばこの部活は何をやってるんだ?」
「よくぞ聞いてくれました!この清十字怪奇探偵団は妖怪の生態を調査し、あわよくば実際に遭遇してみようという活動をしています!!」
「え……妖怪を!?」
「そうです!!そしていつかあの方と会うのが目標です!!」
「――あの方?」
「お二人は知らないんですよね?いいでしょう。詳しくお話します!……あれは僕がまだ小学生の時……」
「……先輩、夏目先輩。」
「――ん?」

清継が嘗て自分の命を救ってくれた妖怪(実は妖怪のリクオ) のことを熱く多軌と田沼に語って聞かせていると、不意に巻が彩乃に小声で話し掛けてきた。

「――どうしたの?巻さん。」
「夏目せんぱ〜い。田沼先輩って、もしかしたらと思ったんですけど、前に話していた『例の』男友達ですか?」
「え?……ああ。うん。そうだけど……」

それがどうかしたのかと尋ねようとした彩乃の言葉は声にならなかった。
彩乃の肯定の言葉に巻と鳥居とカナがキャーと黄色い声を上げたからだ。

「キャー!やっぱり!」
「え?え?」
「――もしかして、お二人は付き合ってるんですか!?」
「ええっ!?ち、違っ!田沼くんとはそんなんじゃ……!」
「じゃあ多軌先輩とですか?」
「ええ!?それじゃあ三角関係!?」
「ちょっ……みんな落ち着いて……」

どうして女の子というのは恋バナにこうも熱くなれるのだろうか。
当人である彩乃を置いてきぼりにして勝手に盛り上がる巻達に、彩乃はついていけない。

「――夏目、ちょっといいか?」
「え?あ、何?田沼くん。」

清継との話が終わったらしい田沼に声を掛けられ、彩乃は助かったと彼に向き合う。
それを見ていた巻達にニヤニヤとした笑みを向けられたが、彩乃は恥ずかしいさから気付かないフリをした。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「ああ、その事ならね……」
「……」
「――何か、あの二人いい感じじゃない?」
「うん。お似合いだよね。」
「……っ」
「……リクオ様……」

巻と鳥居が仲良さげに話す彩乃と田沼を遠目からニヤニヤと観察していると、そんな二人の会話を聞いてしまったリクオはどこか不機嫌そうに顔を歪めた。
そんなリクオを心配そうに見つめる氷麗。

「……リクオ様、大丈夫ですか?」
「――何が?」
「あ、いえ……」
「変な氷麗。さ、僕等は部活動でもやってよ。」
「……はい……」

気にならないわけがないのに、自分の心を誤魔化して然も気にしてないように振る舞うリクオが、氷麗は心配で仕方がなかった。

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