第208話「的場を調査せよ」

「おはよう。カゲロウ具合は?」
「おはようございます彩乃様。もう動けます。」
「あまり無理をするな。」
「柊、名取さんは?」
「名取はまだ調べに行っている。」

翌朝、彩乃とニャンコ先生は昨日の廃屋にやって来た。
そこにはカゲロウが横になっていて、柊が看病をしていた。

「……名取さんもまさかこの廃屋で一晩?」
「その方が調べやすいからな。」
「……どうしてそこまでしてくれるの?」
「ふふ、自分だって妖のために動いているくせに。……名取は自分が藪をつついて蛇を出してしまったと思っているんだろう。」
「――どういう意味。蛇って、的場さんのこと?」
「そんなところだ。」
「彩乃、退くなら今のうちだぞ。的場って奴は関わらない方がいい。タチが悪い。妖相手なら守ってやれるが、人が相手となると勝手が違う。」
「先生……」
「ただい……彩乃!」

その時名取が帰ってきて、彩乃は心配そうに名取を見つめた。

「名取さん……ごめんなさい。でも、ちゃんと夜は休んでください。」
「平気さ。寝不足ごときで私の笑顔が陰ることはないから安心してくれ。」
「ああ!完全に発言が徹夜明けのおかしなテンションじゃないですか!」
「そうか?いつも通りだろ。」

そんなやり取りがありつつ、彩乃達は情報集めをするのであった。
彩乃は妖から情報を集め、名取は近所の人がら話しを聞いて回った。

「――そう。この先の森で妖が襲われたのね?」
「そうです。右目に眼帯をした恐ろしい男でした。」
「ありがとう。行ってみるわ。」
「お気をつけ下さい、夏目様。」

小さな小鬼から教えてもらった情報を頼りに、彩乃たちは近くの森に行ってみることにした。

「――確か、この森だって言ってましたよね。」
「何か目撃情報があればいいけど……」
ガサリ
「「!」」
「……彩乃、私の後ろに。」
「でも、名取さん!」

的場の目撃情報を集めるために妖を探して森を歩いていると、近くの茂みが揺れて彩乃と名取は思わず警戒してそちらを見据えた。

ガサガサ
ガサリ
「――あれ?彩乃ちゃん!?」
「り……リクオくん!?」
「おや、君は……」

茂みの揺れる音が段々と大きくなってこちらに向かってくると、そこからひょっこりと顔を出したのはリクオと氷麗と首無だった。
予想だにしなかった人達との遭遇に、彩乃は勿論、リクオたちも驚いて目を丸くしてこちらを見つめていたのだった。

- 225 -
TOP