白澤の娘は五条悟の友であり伏黒恵に調伏されたい

注意書き

・この作品は呪術廻戦×鬼灯の冷徹のクロスオーバー夢になります。

・作者は鬼灯の冷徹はアニメのみの知識で書いております。何かしら矛盾点が出てきても苦情はやめてください。

・夢主は白澤と人間の娘の間に生まれた半神獣です。

・割とチートな夢主なので、何でもありな方のみご覧ください。



*****



神獣白澤。
中国に伝わる神獣の一種。人間の言葉を解し万物の知識に精通するとされる。
白い長毛で覆われた牛のような体に6つの角、顔に3つと胴の左右に3つの合わせて9つの目を持っている。
その姿を描いた図画は魔除けとして用いられる。

――というのが人間たちに伝わっている神獣白澤という存在である。
だが実際のところ、現実はそれが如何に美化されていることか……
本人は確かに白亜紀から生きているだけあって知識だけは豊富である。
薬学にも精通し、その秘薬は喉から手が出る程欲しがる者も多い。
だが神獣白澤というのは、彼をよく知る神々たちからすれば、とんだ美化されたものだと言いたい。
お酒にめっぽう弱いくせに酒は大好きだし、何よりも神獣白澤という男はとんでもない女好きで、女遊びにだらしないことで有名であった。
女を取っかえ引っ変えにし、美女と聞けば何処へでも駆けつける。
一夜限りの女遊びなんて数え切れない程やってきた。
それは天女に限らず、妖怪や人間と、幅広く行われてきた。
それでも不思議なことに、白澤には子供が一人もいなかったのである。
この世に一対だけ存在する神獣に番はおらず、高位の神なだけあって、中々白澤の子を宿せる資質を持つ女人はいなかったのである。
だから白澤は自分は子を持つことはないだろうと思っていた。だからどれだけ女性と遊んでも大丈夫だろうと。
正直、調子に乗っていた。だが、その油断がいけなかった。
世の中には、呪霊の子を身篭れる特異体質の人間の女性がいるように、神の子を宿せる女性がいるという可能性を、白澤はすっかり忘れていたのである。

「――んで、こんな事になったと……」
「どぉしよう桃タローくん」

白澤は心底困り果てた様子で、桃太郎に泣きついていた。
そんな白澤の腕には生まれて間もない赤ん坊。
赤ん坊は白澤の腕の中で、スヤスヤと穏やかに寝息を立てていた。
幼い赤ん坊から滲み出る神気は、紛れもなくこの神獣と酷似したもの。それを意味すること、それはこの赤ん坊が白澤の子供で間違いないと言うものであった。
それが分かって、桃太郎は顔を盛大に引き攣らせてドン引きした。

「あんた……いつかやると思ってたけど、ついに……」
「だってだって!今までだって何度も女の子と遊んだけど、一度だって子供出来たことなかったんだよぉ!だから今回も大丈夫だろうと……まさかあの女の子が神の子を宿せる体質だったなんて思わなくって!」
「クソですね!」

最低なことを口にする白澤に、桃太郎は青ざめた顔をしながら毒づいた。
そんな桃太郎の言葉に同意するように、閻魔大王とその第一補佐官、鬼灯は頷いた。

「マジでクソですね。しかも貴方の子を産んだ女性は出産の時に力尽きて亡くなっています。彼女の魂を迎えに行ったお迎え課からの報告で、白澤さんの子供を出産したと知らされて、慌てて引き取りに行かされたこっちの身にもなってくださいよ。」
「んなっ!」
「彼女、可哀想だったよねぇ。産んですぐに死んじゃって、我が子を置いてきてしまったって泣いてたもん。でも鬼灯くんが赤ちゃんを迎えに行ってくれたお陰で、最期に我が子を抱けて嬉しそうだったね。」
「ええ、このクソ神獣の一夜限りの遊びに付き合わされた挙句、我が子を抱けぬまま死んでしまったことには同情します。」
「どっ!同意の上でだったんだからな!」
「それはどうでしょうね。彼女は遊女でしたから、仕事の一環のつもりで貴方に抱かれただけだったかもしれませんし。」
「んぐぅ!……その彼女はどうなった?」
「彼女は善人でしたので、特に思い罪もなく既に転生しています。」
「……そう。転生先では幸せなの?」
「ええ、お優しい両親の元で育っている筈ですよ。」

白澤はそれだけ聞くと、何か思うところがあったのか黙り込んだ。
その表情は心なしか少し安堵したように見えた。
一夜限りの関係だったとは言え、自分のせいで子供を身篭らせてしまい、その上自分が神であったせいで彼女は出産に耐えられず死んでしまった。
そんな目に合わせてしまったことに負い目を感じない訳がない。だから、せめて転生先では幸せになっていると聞いて、少しだけ安心したのだろう。
白澤の子を産んだ女性は、稀に見る神の子を宿せる体質の人間で、これがもっと力の弱い低位の神であったならばまだ命はあったかもしれない。
けれど神獣白澤の子ともなれば、その身に宿る神気は膨大であり、到底か弱い人間の体に耐えきれるものでは無かった。
だから出産まで無事に耐えきれたことが寧ろ奇跡であったのだ。

「――さて、貴方は今後その子をどうするおつもりで?」
「……育てるさ。だって僕が父親なんだから!」
「ほう?」

普段は女遊びが酷く、ちゃらんぽらんな神獣であるが、親としての責任はちゃんと果たす気はあるらしい。
珍しく真剣な顔でそうはっきりと告げた白澤に、鬼灯は珍しそうに目を細め、閻魔大王は嬉しそうに何度も頷いていた。

「うんうん、それがいいね。」
「……はあ、しょうがないですね。俺も手伝いますよ。」
「謝謝、桃タローくん。」
「いいですよ。白澤様一人に任せていたらこの子が心配ですから。」

桃太郎は苦笑しながらも、力になると言った。
その事に白澤は心から感謝を込めてお礼を言ったのである。
こうして、神獣白澤に娘ができた。
この事は日本の高天原や地獄、そして中国の桃源郷にまで大きなニュースとして瞬く間に広がったのであった。



*****



それから、あっという間に時は流れた……
娘は「ナマエ」と名付けられ、周りに助けられながら、白澤は頼りないながらも父親としてしっかりと育児をこなしていった。
そうして時代が平成の世になる頃には、ナマエはすくすくと成長し、今では見た目だけなら白澤と兄妹と思われる程の大人の容姿へと大きく成長していた。

「――六眼?」
「そっ!」
「『六眼』って、術式の情報を視認できる特殊な目のことだよね?」
「そっ、流石は僕の娘。よく勉強してるね。その六眼の持ち主が現世に数百年ぶりに生まれたんだけどね、どうやらその子の力があまりにも強大すぎて呪霊たちにまで影響を及ぼしちゃってるみたいんだ。」
「つまり、その人間一人の影響で呪霊の力バランスが崩れたってこと?」
「まあそうだね。ここ数年でめちゃくちゃ強い呪霊が生まれるようになってるし。」
「へぇ〜」

それは珍しい。世界にそこまで影響を及ぼせる程の力を持った人間なんて、中々誕生しないものである。
それは是非とも一目お目にかかってみたい。
そんな好奇心をくすぶられるような面白い話を聞かされては、見に行かないなんて選択肢はない。善は急げである。

「あっ、そうだナマエ。間違っても好奇心で会いに行くなんてことしちゃダメだよ……ってあれ?」

すり鉢で薬草をすり潰しながら、白澤はそう忠告する。
しかし娘から返事がないのを不思議に思って振り返れば、そこにナマエの姿はなかった。
どうやら言ってるそばからもう姿を消したらしい娘に、白澤は顔を青ざめさせた。

「あぁぁぁぁーーー!!?言ってるそばからいなくなったぁ!!」

広い桃源郷に、白澤の叫び声だけが木霊した。
そんな父親の忠告など無視して、娘は元気に桃源郷を飛び出した。
桃源郷の空を、神獣の姿で駆け抜ける。その姿はまさしく神獣白澤だった。
ただ彼と少し違うところがあるとすれば、その体長は白澤に比べて一回り程小さいことと、そして体中を覆う体毛がほんのり桜色に染まっていることであった。
それ以外ならば神獣姿の白澤とまったく瓜二つの姿である。
人間の姿は母親似でも、やはり血を分けた親子なのである。
父親譲りの好奇心旺盛な性格とその明るさは、しっかりと子に受け継がれているようだ。
天国には善人しかいないため、住人は優しくて穏やかな者が多い。
だから天国はとてものんびりとした時間が流れていて、平和であった。
だが、その分娯楽というものが少ない。
まだ神としては若く、幼いナマエには刺激が足りなかった。
故に面白い情報が入れば当然食いつくのである。
だからナマエは数百年ぶりに誕生したという、六眼の持ち主の子供に会いに行ってしまったのであった。



*****



――その日、五条悟は家出した。
五条家の跡継ぎとして相応しくなるようにと、毎日毎日、術式の訓練に習い事。
遊ぶことは禁じられ、毎日退屈で息が詰まる思いだった。
くだらない。何が御三家だ。何が五条家だ。
大人たちの身勝手な事情に俺を巻き込むな。俺を縛るな。
そんな家への反抗心から、俺は家を飛び出した。
毎日着させられる古めかしい着物を脱ぎ捨てて、少しだけ与えられた洋服へと袖を通し、駆け出す。
初めて親に、家に強く反抗したその日、俺の世界は少しだけ広がったような気がした。
今日は徹底的に反抗して、外の世界を楽しんでやる。そう心に誓った。なのに……

「……君が六眼の子供だね。わー、目ェすっごい綺麗だね。六眼ってそんな感じなんだ。初めて見たー!」
「誰だお前。」

街を目指して歩いていたら、変な呪霊に話しかけられた。
見た目は完全に人間の女に見える。けど、身に纏う気配が完全に人じゃない。
けれど呪霊とも少し違う気がする。上手く言えないが、違うのだ。
自慢の六眼で見ても、よく分からなかった。
こいつ得体がしれない。何なんだ。
俺は初めて自分よりも強いかもしれない存在に逢って、じわりと額から冷や汗が溢れ出てきた。
そんな俺の心情など知ってか知らずか、呪霊は俺の眼をじっと覗き込んでくる。近付くなよブス。

「私?私はナマエ!」
「お前の名前なんてどーでもいいんだよ。ブス!」
「はっ?誰がブスだって?私のことかな?この口か?この口がそんな悪いこと言ってるのかな?」
「いっ!いててててて!」
「わぁい、子供のほっぺってよく伸びる〜!」

呪霊はいきなり俺の両頬を指で摘んだかと思えば、思いっきり横に引っ張り出した。
俺の体は宙に浮き、頬の引っ張られる力だけで持ち上げられていた。
子供相手に一切の手加減もせず、力いっぱい横に伸ばそうしてくる力に、俺はあまりの痛さに悲鳴をあげた。
それでもこいつは全くやめようとはせず、笑顔で頬を引っ張り続ける。

「ごめんなさいは?」
「はあ!?なんで俺が呪霊なんかに謝んないといけないんだ!ふざけんな!ぶっこ殺す!」
「ごめんなさい、は?」
「いててててて!」
「ご・め・ん・な・さ・い・は?」
「ごっ、ごめんなさい!!」
「よし、許してあげよう。」

容赦のない呪霊の攻撃に、俺があまりの痛みに先に音を上げて泣き叫ぶように声を張り上げて謝れば、呪霊の女は満足そうに笑って手を離した。
いきなり手を離されたことで、俺は勢いよく尻もちをつく。
思わず「いって!」と小さく声を上げれば、呪霊は「自業自得。目上には口の利き方に気をつけなさい。」とかなんとかふざけた事を抜かしていた。
ムカつくムカつく!なんなんだよコイツ!
ちょっと強いからってなんだ。ぶっ殺してやる!
俺の六眼でもコイツの術式は見抜けなった。それでも俺なら勝てる。そう思って呪力を体から練り上げていく。

「物騒だなぁ。私は別に君と戦う気はないよ。はいはい、呪力しまってねー!」
「なっ…んで……」

呪術を発動させようとしたら、突然呪力がかき消された。
コイツ、今何をした?
俺の呪力をかき消したのか?そんなことがありえるのか?いや、だが実際にそれは目の前で起こった。
本当にありえない。
俺は初めて自分が全力を出しても勝てない相手を目の前にして、初めて恐怖した。
じりっと無意識に足が後退する。
それに気付いたらしい呪霊が、へらりと困ったように笑った。

「ああ、ごめんごめん。怖がらせちゃった?」
「ばっ!怖くねーし!」
「いやいや、子供は素直になりなよ。大丈夫だって、私が強すぎるだけで、君は弱くないよー!」
「なっ!?喧嘩売ってんのか!」
「違う違う。まだ子供だから弱いけど、君はそのうち化けるって言いたいの。」
「呪霊なんかにフォローされたくねーよ!」
「あっ、私呪霊じゃないよ。」
「はっ?」
「これでも神獣なの。あっ、正確には半神獣なんだけどね。」
「はぁー?」

強そうな呪霊だと思っていたら、あっけらかんとした顔で、自分は神だとかなんだとか言い出すやばい奴だった。
五条悟八歳、これが後に五条にとって初めての友となる白桜との最初の出会いであった。



*****



夢主設定
神獣と人間のハーフ。
昔白澤が一夜の相手として遊んだ人間の娘との間に生まれた。
母親は娘を産んですぐに亡くなってしまい、白澤が引き取ることに。
母親は既に転生して、別の人間としての生を歩んでいる。

ナマエ
命名は閻魔大王。最初は父親が白亜紀生まれなので白亜と名付けられそうになった。
余りにも安直な為に閻魔大王がつけてくれた。
容姿は母親似の美人なので、周囲からは「父親に似なくて良かった」と言われている。
性格はお気楽な父親としっかり者の母親の半々と言ったところ。
基本的には陽キャラであるが、恋愛に関しては父親のだらしなさを反面教師に見て育ったせいか、一途を貫くと決めている。

神獣モード
父親のクローン。
不老不死であり、神様なので結構強い。



*****



おまけ
五条先生との出会いから数十年後の時間軸。





あの子に初めて会ったのは、あの子がまだ七歳の時。
いつものように悟に会いに現世に行ったら、あの子に会った。
伏黒恵。初めて会った時のあの子は、とてもやさぐれていた。
自分と唯一の家族である義理の姉以外は誰も信じられないと言った感じに、心を閉ざしていた。
まるで、数年前に私が悟と出会った頃のように……
――いや、初対面でいきなり暴言を吐いてこないだけ、恵の方がずっとずっと可愛げあったな。
そんな感じで、恵は最初は私に心を許してはくれなかった。
保護者になった悟にでさえ懐いてなかったのだから、無理ないのかもしれない。

だけど恵はとても優しい子だった。
心を開いてくれなくても、ちょくちょく会いに行っていた私を決して邪険にしなかったし、ちょっと迷惑そうではあったけど、話しかけたら毎回律儀に返事を返してくれる。
初めて式神を調伏することに成功した時、とても嬉しくて褒めてあげたら、照れくさそうにそっぽを向いた顔が、とても可愛かったのを覚えている。

生意気で口が悪くて、人をおちょくることが大好きな性格クソな悟と違って、全然素直で可愛い子。
私は、恵が大好きになった。

「ねぇ〜、恵。私を式神にしてよ。」
「断る。」

恵の背中に抱きついて、そうお願いする私の言葉を、恵はあっさりと断った。
即答かい。もう秒で断ったよね。ばっさりだよね。
恵を好きになってから、私はこうして現世に来る度に毎回恵にお願いしている。
だけど恵は全く聞く耳を持ってくれない。
最初の時は驚いていたが、流石に毎回毎回同じことを口にしていたら慣れたのか、適当にあしらわれるようになった。
お姉さん悲しいよ。泣いちゃうよ?

「なんで〜?こんなにお願いしてるのにぃ!」
「お前こそよく毎回毎回断ってるのに諦めないな。」
「私役に立つよ?そこら辺の式神よりもぜんっぜん強いし!」
「お前チート過ぎんだよ。どこの世界に神獣白澤を調伏した呪術師がいるんだ。」
「白澤はパパであって私じゃないもん。」
「似たようなもんだろ。」
「全然違う!」

こんな感じで、毎回断られてしまう。
恵曰く、あまりにも強すぎる式神を持つと、それはそれで厄介なことになるそうだ。
まあ確かに、中国の神獣白澤の娘って、何それ?って思われるもんな。
神が人間に傅くなんてそうそうないだろうし、私が恵の式神になったら色々と面倒なことになるのだろう。
人間てめんどくさいなぁ〜、好きな人と一緒にいたいからじゃダメなのかなぁ。
悟に言ったら、「人間って本当に面倒なこと好きだかんね。いっそ恵じゃなくて僕の式神になれば?」とか笑えない冗談を言ってきた。
あんな性格クソの式神なんて絶対にごめんだ。友達でも嫌だ。顔がイケメンでもだ。
私は恵のような誠実で一途そうな人がいい。
パパのようにちゃらんぽらんなのは嫌である。
パパも悟も大切な存在ではあるが、それはそれ、これはこれである。

「恵は考えすぎじゃない?」
「俺は平穏に生きたい。」
「むー、じゃあ結婚しよ?」
「…っ、それもダメだ。」
「ちっ、あれもダメこれもダメか。」
「変な頼み事すんな。」
「乙女心を変なとは失礼な!」

恵くんよ。あまり邪険にされると流石に傷つくよ?
傷ついちゃうよ?泣いちゃうよ私。
うーむ、押してもダメなら引いてみるとか?なんてことを思ったいたら、恵くんのお腹がぐうっと鳴った。
空腹を訴えるその音に、恵くんは少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
あーー!かわいいな本当に!

「恵、何か作ろうか?」
「……ラーメンと炒飯。」
「りょ!美味しいの作ってあげるね!」

恵からのリクエストに、私は快く頷いて調理に取りかかる。
うん、毎回ご飯作ってあげてるし、これはもう通い妻みたいなものだよね。
こうやって外堀から埋めるのもありだな。なんて事を密かに思うのだった。

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