元審神者の少女は五条悟の婚約者!?(呪術廻戦×刀剣乱舞)

この作品は呪術廻戦×刀剣乱舞のクロスオーバー夢になります。

夢主は元審神者で呪の世界に転生してきます。

苗字は設定上「五条」になります。


夢主設定

五条 ナマエ
前世では別の日本で審神者をやっていた。
時間遡行軍との戦いを終えてその生涯を終えたのだが、刀剣男士たちは来世でもずっと一緒だと魂を結んだ。
転生してからは夢主の術式として召喚される。

術式
・刀剣男士を召喚する。
・治癒と探知の能力。
・お守りの生成。

領域展開「四季本丸」
かつて夢主たちが過ごした本丸の空間を呼び出す。
夢主の意志によって四季や天候を変えることもできる。
この空間では刀剣男士たちの身体能力がより高まる。
戦闘と言うよりも気分転換の場所として夢主たちは気楽に利用している。

以上のことを読まれた上でご覧になってください。



*****



私に親はいない。
両親は所謂毒親というもので、膨れ上がって返せなくなった借金から逃げるために、夜逃げした。
まだ赤ん坊であった私を置いて。
だから私は施設で育った。それでも別段両親を恨んではいなかった。
だって前世の記憶を持って転生した私からすれば、彼等は見ず知らずの他人と同じなのだ。だから、捨てられても特に悲しいとは思わなかった。
嗚呼、運が悪かったのだなと。それくらいしか思わなかったのだ。
だって私は前世でも親の愛情には恵まれなかったから。私を育ててくれたのは政府と、優しい優しい刀の付喪神様たちなのだから……


桜の花びらがひらひらと舞い落ちる。
温かな春の陽気に誘われて、眠気を誘われる。
うとうととし始める私の頭を、誰かか優しく撫でてくれる。

「主よ、こんな所で寝ては風邪を引いてしまうぞ。」
「んー、だって三日月。温かいんだもん……」
「そうかそうか。ならばジジイがひざ枕をしてやろう。」
「んー」
「ちょっと三日月!そろそろ主を帰さないといけないんじゃない?」
「おお、そうであったか。」
「んー、まだここに居たい……」
「ダメだって。もう一週間も術を使い続けてるんだから。そろそろ休まないと主の体に影響出るでしょ?」
「……ちえ。清光の意地悪。」
「主のためだよ。」
「はーい」

清光の言葉に、仕方がないと渋々起き上がる。
ここは私にとって秘密の場所だ。かつての本丸によく似たこの場所では、私の意志によって自由に四季や天候を変えられる。
おまけにここで流れる時間まで決められるので、本当なら居たいだけいられるのだ。
だけどこの場所を維持するには私の力を使うので、中々思うようにはいかなかった。
あーあ、一生ここに引きこもってたいなぁ。もっと力をつけないと……
まだ六歳になったばかりの子供が引きこもりたいとかヤバいこと思ってる。なんてことは突っ込まないでほしい。
私は前世の記憶があるので、実際にはもうおばあちゃんなのだ。
……自分で言ってて悲しくなってくるな。やめよ。

「領域展開解除」

そう小さく呟くと、バァンっと空間が弾け飛ぶ。
さっきまで広がっていた立派な日本庭園は、ここにはもうない。
あれは私の力で作り出した、特別な空間なのだ。
え?なんでそんなことが出来るのかって?
知らん。生まれ変わってすぐにこの世界で刀剣男士たちと再会して、大きくなってからこのやり方を彼等から教わったのだ。
清光が言うには、「領域展開」という特別な術式なんだそうだ。
教えられた通りにやったら出来ちゃったから、私は一人になりたい時や現実逃避したい時にこうして利用している。
だって、刀剣のみんな以外と居たって、疲れるだけなんだもん。
んー、もうちょっとだけ居たかったなぁ。
なんて事を思いながら、こっそり入り込んだ倉庫部屋から出る。するとバタバタと職員の人達が慌ただしくしているのに気付く。
どうやら私を探しているらしい。居なくなったことに気付かれたのかな?
なんて事を思っていたら、職員の女性が私を見つけて駆け寄ってきた。

「あっ!ナマエちゃんやっと見つけた!」
「先生どうしたんですか?」
「あのね、貴女を引き取りたいって人が現れたのよ。」
「……はい?」

oh no。この瞬間、私の平穏な施設生活が突然終わりを告げた。



*****



どうやら私は相当金持ちの家に引き取られることになったらしい。
孤児院の院長がとてもホクホクしたいい笑顔で私を送り出していたので、きっと多額の資金でも得たのだろう。
なんだかめちゃくちゃデジャブを感じる。
私が施設に売られるのって、これで二度目だな。
前世では審神者になるために政府に買われ、今度は理由は分からないが何処かの金持ちの家に買われた。
にしても分からないのは、何故私を引き取ったのかである。
私なんて前世の記憶を持って生まれたことと元審神者であったこと以外は普通の幼女だそ?
私の力のことや刀剣たちのことは誰にも話したことは無い。見た目だけなら私はどこにでもいる普通の幼女の筈だ。
なのになんで大金をはたいてまで私なんかを引き取ったんだろう?んー、分かんない。
考えても分かんないことを考えるのはやめよう。


*****


「――貴女はこれから五条家の分家の者として、恥じることの無い振る舞いを覚えてもらいます。」
「…………」

連れて来られたのは、それはそれは大きなお屋敷だった。
私が管理していた本丸もかなり大きかったけど、それとは比べ物にならないくらいの立派なお屋敷。
建物からだけでも相当な家柄だと分かる。
そしてどうやら私は今日から「五条」の性を名乗ることになるらしい。
私の目の前に座っている一人の女性。気品はあるけど、どこか厳格で気難しそうな女性が私の養母となる人らしい。
その人の話によると、どうやら五条家とは呪術師の家系らしい。
呪術師とはなんぞ?と尋ねたら、女性はため息をつきながら呪術師云々の説明から、御三家とは何かといった長ったらしい説明をしてくれた。
その話で分かったこと。私はどうやらその呪術師として優秀な素質があるようで、それで五条家に引き取られたそうだ。
何でも元々私の両親が五条家の遠い、それは遠い親戚なんだとか。だからこの女性は血縁としてはかなり遠くなるが、私とは親戚ということらしい。
どうやって私のことを知ったのかは教えてくれなかった。
だけどこの人は私に何か特別な力があることは見抜いってるっぽい。
女性は私に五条家の人間として相応しくなるように、これから色々と叩き込むとはっきりと言われた。
マジかー、私に拒否権は……ないですよね。
嗚呼、平和な日々も終わりか……
審神者の時といい、呪術師といい、私にはいつだって選択肢など与えられなかった。
だからもう諦めた。どうにもならないことは早々に諦めてしまった方が楽だからだ。
私は女性の言葉に深々と頭を下げて「分かりました」と従順そうに答えた。
今は大人しく従おう。子供の私にはそれしかできないのだから。[newpage]
それから私は五条家の当主に会わされた。
これからこの人が私の全てを決めるんだなと、漠然と思った。
ふと視線を感じてそちらに目を向けると、ご当主の隣に座るご子息らしき子が私をガン見していた。
白髪の髪にどこまでも透き通った水色の瞳。まるで水面の底を切り取ったかのように綺麗な目だった。
思わず私が見蕩れていると、その男の子は突然不機嫌そうに目を細めて「ブス」と私に向かって言ったのであった。
それが私と五条悟の最初の出会いである。
まあ、要するに私の中での彼の第一印象は最悪なものだった。

「それがどうしてこうなったのか……」
「おっ?懐かしいものみてんじゃん。」

私がアルバムを開きながら過去のことを振り返っていると、さっきまで考えていた人物が私の肩越しに覗き込んできた。
「懐かしーじゃん」とか言いながらペラペラとアルバムを捲る。

「……悟、近い。」
「えー、いいじゃんか。俺たち婚約者だろ。」
「ソウデシタネ」
「なんでカタコト?」

そうなのである。何がどうしてこうなったのか、私と悟は婚約者になったのである。
いや待ておかしいだろ。本当になんでこんな事に?
最初の出会いは最悪だった筈だ。
だから私はこいつを敵認定し、家では徹底的に避けた。だけどある時悟に刀剣たちと一緒にいるところを見られてしまい、それから何故かしつこいくらいに構ってくるようになったのだ。
いつしか一緒にいるのが当たり前になり、私と刀剣たちだけの秘密の場所だった本丸で共に時間を共有することも多くなった。
きっかけは何だったか……次期当主である悟は五条家では何不自由なく大切にされてきた。
約束された地位に、持って生まれた才能。何不自由などなかった。とても恵まれていた。
けれど、その代償として彼には自由がなかった。
悟はそれが嫌で嫌で、仕方なかったらしい。だから少しでも家から反抗したくて、わざと乱暴な口調で話すようになり、我儘を通すようになった……らしい。
私から言わせれば素でやっているような気がするのだが……話が逸れた。
まあ、ある日悟が修業をサボって屋敷をうろついていたら、私が領域を展開するところを見られたのだ。
それから何かと本丸でサボることが多くなって、私といる事も多くなった。
そんな日々を繰り返し、気が付けば数年経っていた。
そんな時に、ご当主から呼び出されたのだ。
そうして告げられたこと。私を五条悟の婚約者にするという、とんでもない命令。
うん、これは命令だ。逆らえないのだから、命令である。だって本人の意思に関係なく決定事項にされたんだもん。
それを聞いた刀剣たちの荒れようったら、凄かった。

「あの時みんなを宥めるの、大変だったなぁ〜」
「そんなに荒れることかな?」
「悟も悟でなんで拒否しなかったのさ。お陰で未だに婚約者のままだよ。」
「だって親父にナマエを婚約者にするようにお願いしたの、俺だもん。」
「……は?」

今なんと?えっ、待って。どういうこと?

「だーかーらー、俺がナマエを婚約者したいって親父に頼んだの!」
「……はっ?えっ?何で??」
「そんなの俺がお前を好きだからに決まってんじゃん。馬鹿なの?」
「…………えっ?いつから?」
「んー、割と出会ってからすぐ?」

なんということでしょう。
えっ、いつから?本当にいつからそんな……
わっかりずれーわ!お前が私を好きだなんて今の今まで知らなかったわ!
なんかの嫌がらせかと思ったよ!!
いや、嫌がられなのか??
頭の中が混乱する。グルグルグルグル色んなことが駆け巡って気持ち悪い。

「そんな訳で、俺お前との婚約取り消すつもりねーから。覚悟しておけよ。」
「えっ、なっ?」
「すぐに落とす。」
「…………」

そんな恐ろしいことを、あの男は無駄に整った顔で言い放つ。
神様。付喪神様。刀剣男士様。
どうかこの私をお救いください。願うなら平凡な生活を送りたいです。
そして今日も私は現実逃避する。

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