あの日いた島は私以外の人間なんて居もしない無人島だったが、そこかしこから船が来ては去って行ったので、航路的に一時立ち寄ったほうがいい島ではあったのだろう。

 私はこの島で果物や魚を採ったり、川で水を飲んだりして過ごすことが出来ていたが、それではこの先の生活を考えると不毛だと言うこともわかっていた。いずれ今着ている服は入らなくなるし、悪人に見つかれば売り捌かれるかもしれない。だったら、と意を決して、行動に出た。
 この島に立ち寄ったなかで、比較的まともそうな船に忍び込んだのである。見つかった場合を考えると時代錯誤の海賊たちの船に乗るなんて冗談じゃないが、普通の人のような、おそらく商船といった雰囲気であれば見つかったとしてもまだマシだと考えて、小さくなってネズミくんの腹に隠れ、船に乗り込んだのである。無論、密航・無賃乗船は罪であるが、取り残されたふうを装って話しかけるには、勇気が足りなかったのだ。

 いい人そうに見えて、全然違ったなんてことはよくあることだ。

 そして実際そうだった。奴隷船。地獄か? ここで彼らを解放して、果たしてプラスになるのかという話だ。どうしたもんかな。

mae ato