リディアが夏祭りに行くそうです

デメリット。の水坂花音さん宅のお子さんとろうふぁくとりーの風名ろうふぁさん宅のお子さんに友情出演していただいています。
世界観的にはゲームよりも現パロといったニュアンスです。
ネタでしかないクソSSです。
何でも許せる方向け。





八月某日。セントシュタインでは毎年この時期になるとかなり大規模な夏祭りを開催する。年に一度のお祭り。リディアも例に漏れず、数週間前から浴衣に合う髪型を模索し、万全の状態で夏祭りにやってきた。

待ち合わせの場所へ向かうと、そこにはすでに何人かいて。
「リディアお姉ちゃん、やっほー!」
もう待ち合わせ場所で待っていたアデリーヌがリディアの姿を見つけるなり、手を振って皆がいる位置を教えてくれた。
アデリーヌのそばにはフリアイ、アルマ、ティエラ、ルナ、そしてインテとルルーが待機していた。みんな思い思いの浴衣に身を包んでいる。特に女性陣なんかは髪型もいつもと違うので新鮮だ。

「あれ、アリスは一緒じゃないの?」
アデリーヌが問う。
「ああ、アリスは」
「なんでもアルと二人で回るらしいよ」
リディアの言葉を遮ってクリスが答えた。
ニコニコ笑顔なクリスに対し、アデリーヌは「そっかぁ」と呟く。
「リディアちゃん、その浴衣とても似合ってるよ!髪もいいかんじだね」
クリスに褒められリディアは表情筋が緩んだのを感じた。
「本当!今日は編み込みにしてみたの」
インターネットで検索しまくって見つけた髪型だ。複雑そうに見えて意外と簡単にまとめることができた。
リディアと同じくらい髪の長いアデリーヌやティエラも普段より凝ったヘアアレンジをしている。対して髪が伸びていないルルーやルナは大きな髪飾りで浴衣に合わせている。

「みんなー!お待たせ!」
「わっ、みんな結構待ったかな……?」
と、その時どこからか声がした。声の主はリーベとその兄、フィデルだ。フィデルを見るや否や、ティエラの顔がパッと明るくなる。
「まだ集合時間にはなっていないから大丈夫よ」
フリアイが言う。リーベは「フリアイ会いたかったー!」と言い、勢いよくフリアイに飛びついた。
馬が合うのだろう、リーベはフリアイになついているように思える。

「いつも思うんだけど、フリアイはリーベに飛びつかれてよく平気だね……」
「ちょっとそれどういう意味よ」
フリアイに抱きついたままリーベは兄を睨んだ。
「え、だって昔はよくヴァンにタックルかましてヴァンを気絶させてたじゃないか」
リーベ本人には全くそのつもりはないのだろうが、フリアイに対してもリーベは抱きつきに行くというより飛びついていた。リーベはパワーだとか、エネルギーだとかを持て余しているのだろう。(実はリディアも過去に一度だけリーベに飛びつかれたことがあるが、なかなかの力だった)
けれど不思議なことにフリアイはリーベに飛びつかれても平気なのだ。

「違うわ!あれはヴァンが貧弱なのが悪いのよ!」
「ボンボンボンジュ〜ル?」
リーベがフィデルに抗議していると、噂をすればなんとやら、ヴァンの声が聞こえた。
ヴァンがいる、ということは……。

「サバ、皆さん」

アランだ。
アランもヴァンも浴衣に謎のゴーグルをかけたスタイルだ。浴衣にゴーグルとはまた組合せの悪そうなチョイスである。

「やあ、そこのマドモアゼル。今宵は俺とエクスタシーなことをしようぜ」
アランはティエラの前で跪き、ティエラの手を取った。ティエラは困り果てている。

「やあ、そこのマドモアゼル。今夜は俺とトレビアーンなことをしようぜ」
ヴァンもヴァンでルルーの前で跪き、ルルーの手を取った。ルルーは困り果てている。
リディアの隣でルナがチャラ男二人にドン引きしている。さらにその隣ではクリスが爆笑している。

「ルルーちゃんもティエラちゃんも大丈夫かな……」
「あー、アデリーヌもリーベもいるから大丈夫じゃないかな……」
心配するルナに、チャラ男二人の末路をいつも見てきたリディアは心配いらないと答えた。
しかし、今日は夏祭り。チャラ男二人もいつも以上に意気込んでいるのだろう。
アランは突然ティエラの胸に両手を置いた。

「お、柔らかい……とってもとってもトレビアーンだ」
「な……、何するんですか?!」

そしてヴァンも負けじとルルーの手の甲に唇を落とした。
チャラ男達の行動にクリスの爆笑ゲージが最大まで上がったのか、クリスは一人大笑いしている。
「ねぇ、アランもヴァンもウケる」
クリスの語尾にはアルファベットのダブルがいくつもくっついていそうな勢いである。満点大笑いだ。

「ちょっと……」
ティエラが困っているのを見かねたフィデルがアランを制止しようとした。
「ね、ねえ……女性の胸をさ、その、いきなり」
「なんだ?言いたいことがあるならハッキリ言ってくれないと馬鹿な俺には分からないぜ〜」
「だ、だから!いきなり女性の胸を揉むのは……」
アランに押され気味なフィデルにリディアはティエラのためにもどうにか頑張って欲しいとエールを送りたくなる。
「あ?いけないって言うのか?誰がそんなこと言ったんだ?何時何分何秒、地球が何回回った時だ〜?あっと、地動説を訴えるやつは容赦しないぜ〜」
地球が何回回った時かを聞いておきながら地動説は許さないだなんて、一体どういう頭をしているのだろう。

一方のヴァンも熱心にルルーを口説くが困っているルルーを見かねたインテに諭されていた。
「女性を困らせるのはよくないな」
「だ〜れがそんなこと言ったんだ?そいつのプロフィール持ってこい。第一、彼女は口説かれ慣れていなくて戸惑っているだけだ。大丈夫、俺が手取り足取り教えてやるから」
ヴァンの言葉にクリスは腹を抱えて笑っている。ついにはスマホを取り出してビデオカメラを回す始末だ。

フィデルがアランに言い返せず、インテもヴァンに呆れたその時、ついに幼馴染の迷惑行為を見かねたリーベが動いた。

「いい加減にしなさーい!」
リーベの平手打ちが豪快な音を立てる。
「いってぇ〜」
ヴァンの顔には真っ赤な手の痕がくっきりと浮かんだ。
リーベに続き、アデリーヌがアランを制止しに立ち上がる。しかし、アデリーヌがアランの耳を引っ張るよりも先に、アランは後ろから何かの衝撃を受け、前に倒れてしまった。

「アランせんぱーい!!!!」
アランの後ろにはアリスが立っていた。そして、その隣にはルナの双子の兄である、アルテミスも。

「アラン先輩の助言通りにドゥン君を合体素材に使ったらドゥン君いなくて寂しいんだけど?!どうしてくれんだ!!」
何とも理不尽な理由で暴力を振るわれるアラン。
恐らくアリスの言うドゥン君と合体素材とは、彼女が今攻略中という女神転生の話だろう。

「ティエラちゃん、大丈夫かい?」
「は、はい……なんとか……」
フィデルがティエラの元へ駆け寄る。ティエラは少し俯き加減になりながら頬を紅く染めた。

「ていうかさ、アラン先輩もヴァン先輩もセンスのない格好だな。なんだよゴーグルって。プールに行ってろよ」
「全くだな。一体祭りをなんだと思ってんだ」
アルとアリスはチャラ男二人のファッションセンスを馬鹿にしているが、そういう二人は浴衣に身を包んでいるわけではなく、なぜかパンク服を着ていた。

「いや先輩たちも二人には言われたくないでしょ?!」
一応浴衣を着ているだけアランたちの方がまともな服装のような気がする。
リディアは思わずツッコミを入れてしまった。アルとアリスの服装はツッコんだら負けのやつの気がしてきた。

「二人の服装、見事に色が真逆だけど、あれはあれでいいかもしれないわね」
フリアイがアルとアリスを見て呟く。
フリアイの言う通り、白を基調とした服を着ているアルに対してアリスは黒を基調としたパンク服だ。
アルのほうはシルバーアクセをじゃらじゃらと着けている。じゃらじゃらしていて動きにくそう、という点はツッコんだら負けのやつだろう。
「アル、いつの間にあんな服を買ってたの……」
兄が知らない間にパンク服を買っていたことに少なからずショックを受けているルナ。

「うっ、アルの服を見ていたら昔の黒歴史が俺の胸を縛り付ける……」
「アラン?!」
まるで腹痛を起こしたかのように腹部を抑えるアラン。

「アルテミス……、一つ忠告しておいてやる……。俺にもかつて、ラノベとV系にハマりまくっていた時期が……!あった……!セフィロスのような服装に闇遊戯が満足しそうなくらいにシルバーアクセをつけるのが最高にかっこいいんだと……!当時は本気で思っていた……!けどな、もう三年くらいしたら己の過ちに気付くぞ……!悪いことは言わない、早めに卒業するんだな……」
アルとアリスの服装によほどHPを削られたのか、アランとヴァンはその場から立ち去ってしまった。
チャラ男がいなくなっただけで辺りに平和が訪れた気がする。


「ところで」
そして、リディアはここに来て初めてアルマの声を聞いた。気がする。


「サバって魚の鯖?」
アルマのある意味無邪気ともとれる発言にその場にいた誰もが脱力した。

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Honey au Lait