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その声が懐かしいと感じてしまうほど久しくて、自分に触れている手も視界に入る必死そうな瞳も、私自身の高揚感へと繋げた。司くんが此処にいる。嬉しくて、少しだけ涙腺が緩んだ。

「きてください」

そんな感動も束の間、司くんは私の手を掴み走り出した。

「まっ、」

言いかけた矢先、視界に入ったのは月永先輩の姿。私と目が合うと、歯を見せ笑った。先輩に言いたいこと山ほどある。先輩、と言いかけた私の口は、息を吐くことなく周りの騒めきに掻き消された。ただただ、私の足は司くんにつられるように走り出す。

講堂の裏口を抜け、人気のある場を避けながら辿り着いたのは身に覚えのある場所。以前私が瀬名先輩に怒られた時に辿り着いた場所だ。あの時のような暑さはもうなく、その代わりに秋らしい涼しい風が吹いた。衣装のままの司くんは、私の手をゆっくり離すとマントを靡かせ振り向く。溢れそうな程大きな瞳は、私をしっかり捉えていた。

「今日のStageは、ご覧になっていたのですね」

「うん、司くんもKnightsの事も、ちゃんと見てたよ」

動揺した私からは、月並みな言葉しか出なかった。もっと伝えたいことがあったろうに。あれやこれやと反省を繰り返していると、目の前にいる司くんは少しだけ口角を上げ微笑んだ。

「司くん……?」

「名前さんに会いたかった」

司くんは、私にゆっくりと近づく。そして、再び私を優しく抱き締めた。

「本当は、もっと早くこうしたかった」

耳元で囁かれてこそばゆい。思わず身をよじらせると、背中に回った腕の力が少しだけ強くなる。

「Judgmentまで、姿を見せてくれませんでしたね」

「それは月永先輩が、言ったから」

「Leaderと一緒に居たんですか」

「……うん」

呟くように答えると、司くんは黙り込んだ。司くんの小さな息遣いだけが空気を震わせる。比例するかのように、私の心臓は脈打った。

「何でしょう……」

ゆっくりと距離を置かれた。
密着していた2人の間に風が吹いて寂しさを仰ぐ。

「嫌、です」

秋の風に掻き消されそうな声だった。
聞こえなくても良かった声なのかもしれない。けれど私の耳はあまりにもタイミングが悪く、その小さな声すらも鼓膜を響かせた。

「……えっ」

一気に体温が上がる。
思わず目を逸らし、自分の手元に目をやると赤くなっていた。恥ずかしい。

「嫌です。名前さんが、Leaderと親しくする姿を見るのが」

真っ赤になった手がもう一度引かれる。
顔を上げると、さっきよりもうんと近く感じる司くんの顔。
心なしか頬が少し赤い。

「ずっと、私の側にいてほしい……それはわがままですか」
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