黒崎一護の一息。


身体が軽くなった気がして目が覚めた。
痛みがない、よく見れば酷かった怪我は完治している。
半透明な器具に薬棚、この白い部屋は誰かに研究室だろうか。拘束の類いは一切なく、斬魄刀は近くの机に立てかけられている。
敵に捕まったとは考えにくかった。

数分して開かれた扉から花太郎と白衣を着た女の死神が現れ、俺は助けられたのだと理解する。話によれば花太郎の元上司らしく、治療をしたのも彼女らしい。
素直に礼を伝えれば優しく微笑まれ、母性のようなものを感じた。

「わたくしの名は晒科李珠、ここ技術開発局で医学研究部門開発室長を勤めております」
「俺は黒崎一護だ。知ってるとは思うが、あいつを...朽木ルキアを助けに来た」

李珠さんは何も言わなかった。何も教えてはくれなかったし、何も聞いてこなかった。
ゆっくりしている時間はないと言えば密やかに送り出してくれ、ろくに礼を言えぬまま立ち去る。
また会えるかもわからない。ルキアを助けたとところでどうすればいいかわからない。
敵だらけの俺には前に進むことしか出来ない。
それでも、支えてくれる人たちがいるから。

不思議な人だった。
また会えるような気がした。根拠はないが。
色々話してみたいと思った。
よくわからないけど。

なんだか落ち着いた気がした。

- 1 -
←前 次→