これまでも、これからも、貴方のことを
酷く懐かしい夢を見た。
目が醒めた瞬間、目に入ったのは見慣れた自室の天井で、それから自分のベッド。
恐る恐る首を横に傾ければ、大きな大きな瞳と目があった。
「…名前?」
心配そうに眉を下げて。
その所為でいつもは力強い眉も情けない姿になっている。
私は酷い夢の所為で荒かった呼吸をゆっくり整えて、ぽつりと呟く。
「おはよ、杏寿郎」
「何やら魘されていたようだが」
「夢を見ただけ」
起こそうか迷った、と言いながら布団の中で私を抱きしめる。
杏寿郎の分厚い胸板に頬を寄せて私は瞼を閉じる。
大きな手が私の後頭部を撫で、不安を少しずつ取り払っていく。
大丈夫、大丈夫。もうあんな夢を不安がる必要はない。
「今何時かな」
「まだ4時だ。もう少し眠ってもいいだろう。疲れが出ているのかもしれない」
「……疲れる要因を作った自覚はあるんだ?」
「よく啼く名前がいけない」
確かに、と杏寿郎の胸の中でそっと窓に目をやる。
まだ陽光は差していない、少しだけ寒く感じる部屋の中、ぎゅうっと強く杏寿郎が抱きしめる。
ずきん、と下半身が僅かに痛んだ気がしたが、これは全て杏寿郎が悪いので朝になったらこき使ってやろう、と考える。
暫く私の頭を撫でていた杏寿郎がかすれた声で私を呼ぶ。
「名前」
「ん?」
「また、俺が死んだのか?」
「……何で分かるの」
「それだけが心残りだったからな」
いつもはどこを見ているのわからない視線を、生徒に向けているのに。
今はじっと私の瞳を見つめて、ゆらゆらとそれが揺れている。
杏寿郎と私は前世の記憶がある。
遥か昔、私たちは恋人だった。だけど、それも長くは続かなかった。
杏寿郎は私を置いて一人で逝ってしまったから。
死んでもおかしくない生業だった。いつまでも二人仲良くとはいかない、と理解はしていた。
のにも拘らず、私は部下の前でも危うく心を乱すところだった。
それくらい想像を絶する、痛みだった。
前世の記憶を持ったまま、今世で生活を続けて。
そして、また杏寿郎と出会った。
杏寿郎もまた私と同じく記憶を持っていた。初見だというのに、二人で抱き合って。
私は鼻水やら何やらぶち撒けながら情けなく、その身体にしがみついていたのも記憶に新しい。
あれは今思うと羞恥を晒しただけだった。
今世こそは、幸せになると二人で決めて今こうして一緒に暮らしている。
けれども、たまにこうして昔の夢を見て魘されることがある。
まだ私はあの時の事を引きずっているのかもしれない。
「あの時は冨岡に慰めてもらったから」
「…慰めて…?」
「そう、あの男、案外優しいのよ」
「ほう?」
急に杏寿郎の語尾が強くなった。
と、思ったら、抱きしめられていた私の身体がぐるんと半回転し、私の上に杏寿郎が口の端を上げた状態で伸し掛かっていた。
突然の事に驚きつつ抵抗しようと手を伸ばしたけれど、その手は自分の頭の上でまとめられてしまった。
「まさかベッドの中で他の男の名を呼ばれるとはな」
「…! 杏寿郎が心残りって言うから!! それにそんな意味じゃないし!!」
「それはまあ、身体に聞くとしよう」
そう言って杏寿郎が私の鎖骨をやらしく撫でる。
「ん、」と小さく声が出てしまったのを杏寿郎は聞き洩らさなかったみたいで、さっきまでシュンとなっていた眉が今はもう元気に吊り上がっている。
嘘だ、さっき2回もしたじゃない。
「もう朝だよ、杏寿郎!」
「いや、まだ夜だ。夜明けまで励むぞ」
「ば、ばか!」
今日が土曜日で良かった、と頭の隅で考えつつも私はせめてもの抵抗のため、杏寿郎の目を見据える。
「……幸せになりたいわ」
「誰よりも幸せにする。だから、今回は最期まで付き合ってもらうぞ」
「望むところよ」
これまでも、これからも、貴方のことを
「ほどほどにしてね。私、今世は体力ないのよ」
「ああ、甘く蕩けさせてやる」
「違う、そうじゃないってバカ」
目が醒めた瞬間、目に入ったのは見慣れた自室の天井で、それから自分のベッド。
恐る恐る首を横に傾ければ、大きな大きな瞳と目があった。
「…名前?」
心配そうに眉を下げて。
その所為でいつもは力強い眉も情けない姿になっている。
私は酷い夢の所為で荒かった呼吸をゆっくり整えて、ぽつりと呟く。
「おはよ、杏寿郎」
「何やら魘されていたようだが」
「夢を見ただけ」
起こそうか迷った、と言いながら布団の中で私を抱きしめる。
杏寿郎の分厚い胸板に頬を寄せて私は瞼を閉じる。
大きな手が私の後頭部を撫で、不安を少しずつ取り払っていく。
大丈夫、大丈夫。もうあんな夢を不安がる必要はない。
「今何時かな」
「まだ4時だ。もう少し眠ってもいいだろう。疲れが出ているのかもしれない」
「……疲れる要因を作った自覚はあるんだ?」
「よく啼く名前がいけない」
確かに、と杏寿郎の胸の中でそっと窓に目をやる。
まだ陽光は差していない、少しだけ寒く感じる部屋の中、ぎゅうっと強く杏寿郎が抱きしめる。
ずきん、と下半身が僅かに痛んだ気がしたが、これは全て杏寿郎が悪いので朝になったらこき使ってやろう、と考える。
暫く私の頭を撫でていた杏寿郎がかすれた声で私を呼ぶ。
「名前」
「ん?」
「また、俺が死んだのか?」
「……何で分かるの」
「それだけが心残りだったからな」
いつもはどこを見ているのわからない視線を、生徒に向けているのに。
今はじっと私の瞳を見つめて、ゆらゆらとそれが揺れている。
杏寿郎と私は前世の記憶がある。
遥か昔、私たちは恋人だった。だけど、それも長くは続かなかった。
杏寿郎は私を置いて一人で逝ってしまったから。
死んでもおかしくない生業だった。いつまでも二人仲良くとはいかない、と理解はしていた。
のにも拘らず、私は部下の前でも危うく心を乱すところだった。
それくらい想像を絶する、痛みだった。
前世の記憶を持ったまま、今世で生活を続けて。
そして、また杏寿郎と出会った。
杏寿郎もまた私と同じく記憶を持っていた。初見だというのに、二人で抱き合って。
私は鼻水やら何やらぶち撒けながら情けなく、その身体にしがみついていたのも記憶に新しい。
あれは今思うと羞恥を晒しただけだった。
今世こそは、幸せになると二人で決めて今こうして一緒に暮らしている。
けれども、たまにこうして昔の夢を見て魘されることがある。
まだ私はあの時の事を引きずっているのかもしれない。
「あの時は冨岡に慰めてもらったから」
「…慰めて…?」
「そう、あの男、案外優しいのよ」
「ほう?」
急に杏寿郎の語尾が強くなった。
と、思ったら、抱きしめられていた私の身体がぐるんと半回転し、私の上に杏寿郎が口の端を上げた状態で伸し掛かっていた。
突然の事に驚きつつ抵抗しようと手を伸ばしたけれど、その手は自分の頭の上でまとめられてしまった。
「まさかベッドの中で他の男の名を呼ばれるとはな」
「…! 杏寿郎が心残りって言うから!! それにそんな意味じゃないし!!」
「それはまあ、身体に聞くとしよう」
そう言って杏寿郎が私の鎖骨をやらしく撫でる。
「ん、」と小さく声が出てしまったのを杏寿郎は聞き洩らさなかったみたいで、さっきまでシュンとなっていた眉が今はもう元気に吊り上がっている。
嘘だ、さっき2回もしたじゃない。
「もう朝だよ、杏寿郎!」
「いや、まだ夜だ。夜明けまで励むぞ」
「ば、ばか!」
今日が土曜日で良かった、と頭の隅で考えつつも私はせめてもの抵抗のため、杏寿郎の目を見据える。
「……幸せになりたいわ」
「誰よりも幸せにする。だから、今回は最期まで付き合ってもらうぞ」
「望むところよ」
これまでも、これからも、貴方のことを
「ほどほどにしてね。私、今世は体力ないのよ」
「ああ、甘く蕩けさせてやる」
「違う、そうじゃないってバカ」