いざ、歓迎会の金曜日。朝からわくわくとしている私はさぞ気持ち悪かっただろう。


「ってか名前ちゃんも一人暮らし?私もなんだー」
「そうなんだ!まだここらへんのことよく分かんないから教えてほしいな」
「任せて!スーパーの安売りとかチェック大事だよね!」

移動するまでの間にお茶子と話しながら歩く。外せない用事があるという梅雨ちゃん、甲田くん、瀬呂くん、轟くん、常闇くん、面倒といった爆豪くん以外のなんと14人が来てくれることになった。とても嬉しい…今はみんなそれぞれ手分けしてお菓子やジュースを用意してくれるとのことなので、甘えることにした。ちなみに住所は既に皆に伝達済みで、梅雨ちゃんにもいつでも遊びに来てねと伝えておいた。

「そういえばもう少しで期末試験だねー。私結構危ういよー」
「えっ、そうなんだ…。私範囲全くわからない…」
「おっじゃあ勉強会だね!百ちゃんのお家で今度やるらしいよ!」
「わー参加したい!」

話しているとあっという間に私の家に着く。雄英、というか国が用意してくれたアパートは一人暮らしには充分すぎる2LDKの部屋で、きっと14人まるっと入れるくらい。だからこそ一人で家にいる時寂しさも大きいんだけれど…。部屋に入るとみゃあと猫が出迎えてくれ、お茶子は猫を見て目を輝かせた。

「わぁ可愛いぃふわふわだ!名前なんていうの?」
「えっと……猫、かな」
「…猫の名前が猫て!!」

ぶーっと吹き出したお茶子に恥ずかしくて目を逸らす。だってこういうセンス無いし…猫は持ち前の人懐っこさでお茶子にごろごろと甘え、お茶子も猫にメロメロだった。


「思ったけど名前ちゃんって以外とズレてるね!更衣室にも驚いてたし」
「あれは前の学校に無かったし……それに女子のほうが多くて男子の前でも普通に下ネタとか言うし何なら一緒に着替えてたから、それが普通なのかと」
「えぇそうなの?思春期なのにね」

「オイラの前で着替えてもいいんスよ……」

玄関前で話している、がちゃりとドアが開く。そこにはお菓子が入った袋を抱えた峰田くんと、おぉ女子の家と呟く上鳴くんがいた。

「俺ら一番っぽいな」
「うん。お菓子ありがとう、あがってあがって」
「お邪魔しまーす」
「いいんスよ……」

はぁはぁと鼻息を吐く峰田くん。なんだ、彼は可愛い外見で頭の中ピンクな感じの男子なのか。部屋までの短い廊下で、こそりとお茶子に聞くと「性欲の権化」と即答した。性欲の権化って…
3人をリビングに通し、適当に座ってと伝える。うん、やっぱり14人余裕で入るな…。お茶子はすごい!広い!と連呼するし、上鳴くんは落ち着かない様子でそわそわとしていた。なんか可愛い。
とりあえず私は自分の部屋で着替えてくると伝え、廊下を進み自室のドアを開ける。制服を脱ぎ、クローゼットから簡単な私服を選んでいると、視線を感じた。ドアの方向を振り得ると、隙間から息の荒い峰田くん。

「わぁ、びっくりした。いるならいるって言ってよ」
「おぉ……その反応は嫌がってはいないんスね……」
「いやまぁ、だってもう見ちゃってるでしょ?」
「えぇ、ばっちりと」

転校して5日目で裸を見られたとなると流石に恥ずかしい気もする。まぁ別に死にはしないし、いいんだけど。簡単に後ろを取られた悔しさもあり、なんとかやり返したい気持ちになる。けど普通にやり返すのではつまらない。

「峰田くん」
「なんスか……オイラにずっとご褒美見せ続けてくれるんスか……」
「……えっち」

わざと恥ずかしそうに頬を染めて脱いだシャツで胸の前を隠すようにすれば、峰田くんはパァン!と音を立てて後ろに倒れこんだ。その音を聞いて上鳴くんたちがどうした!?と駆け寄ってきた。急いで服を着替えて何事も無かった様に部屋を出て、倒れた峰田くんに今気づいたと言うような顔をする。

「うわ、血だらけ」
「あーこいつ着替え覗いて自爆しやがったな」
「えっ、大丈夫名前ちゃん。サイテーやな。縛っておこう上鳴くん」
「おう。名前、なんか紐とかある?」
「あ、うん。ガムテープでもいい?」
「おぉ、サンキュ」

ビーッとテープを峰田くんの身体に巻きつける。ぐるぐる巻きになった峰田くんは小さく唸り声を漏らす。それを聞いたお茶子は少しだけテープを千切って峰田くんの口に貼り付けた。

「喋るのも禁止にしとこ」
「はは、意外と厳しいねお茶子、あ、起きそう」
「……っ、ん!?んーっ!んーーっ!」
「はは。ここらへんに転がしとこうぜ」

そろそろ皆来るんじゃね?と部屋に戻る上鳴くんとお茶子の後ろを歩く。テープのせいでくぐもった声しか出せない峰田くんにこそりと呟く。スカートの私は床に転がる峰田くんからは随分際どく見えてるはずだ。けど決して中は見せてあげない。

「さっきの、2人の秘密だよ?」

これもね、と妖しくスカートを揺らし笑って見せれば、いとも簡単に峰田くんは床に崩れ落ちた。やり返し完了である。


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