峰田くんはそのままに、上鳴くんとお茶子のいるリビングへと向かう。すると丁度ぴんぽん、と来客を知らせる音が鳴る。今度は誰だろうか。

「名前、遅くなってしまった」
「障子くんだ、いらっしゃい」

まだ3人しかいないから大丈夫だよ、と伝える。複製腕にはジュースや紙コップなどが入ったビニール袋がそれぞれぶら下がっていた。おお、沢山。持とうか?と靴を脱ぐ彼に尋ねるとやんわりと遠慮された。彼は大きな体でとても優しい心の持ち主だと、この数日で知っていた。そのままこっちです、とリビングへと向かうと障子くんが立ち止まる。

「おい、名前」
「なに?」
「こいつ、どうしたんだ」
「あぁ、峰田くん…」

そこにはまだ床に転がる峰田くん。まだ目を覚ましていない。先程の出来事を掻い摘んで話せば、こいつは…と溜め息を零した。それから、大丈夫だったかと気にかけてくれる。やっぱり、彼は優しい。

「大丈夫だよ、ありがとう。けど峰田くんはもう少しこのままにさせておこう」

意地悪く笑うと障子くんは少しだけ目を見開いてそれから少しだけ笑い声を漏らした。そして一言、

「意外、だな」
「何が?」
「転校してきた日のHRで、大人しい奴かと思っていた。けど思っていたよりも人懐っこい顔をするから」
「そ、そうかな」
「変という意味ではない。すまん、気に触ったか」

そんなことないよ、と伝えるが、正直どんな顔をしていいか分からなくなる。転校してきた日はただただびくびくとしていたから、ある意味猫を被っていたのだ。本当の私はなかなか狡猾だし、ものぐさだ。そう話すと上鳴くんたちが早く入ってこいよとドアから顔をのぞかせた。確かにずっと廊下で話していた。その間ずっと障子くんは重い飲み物を持っていて、慌ててごめんと謝る。そのままリビングに入り、とりあえず飲み物冷しとこうと冷蔵庫を開けた。障子くんは手伝うと飲み物を袋から取り出し、冷蔵庫の前の私にテンポ良く渡してくれる。

「さっきの話だが」
「あ、うん」
「お前は自分のことを猫被っていたとか言っていたが、A組はそれを打ち明けられるくらいの居場所であるということなんだな」
「………そっか、そうだね。じゃなきゃずっと猫被ったままだったもんね」
「良かったな」
「うん。みんないてくれて良かった」

そう笑うと障子くんはさっきみたいに、見えるのは目だけではあったけど薄く笑ってくれた。


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