はっと我に返ると皆が私を見ていた。その目には驚きと恐怖が浮かんでいた。なに、が起きたの。
ふと、下を見ると私の手に血のついた針。それだけ見て、あぁ、やってしまったのだと気がついた。

「名前さん、えっと、」

1番初めに声をかけてくれたのは緑谷君だった。其の顔は何か確信があるようなもので、直感的に彼は知っていると思った。

「おいモブ女てめぇ!!!」

次に言葉を発したのは、確か、爆豪くん。手から爆発を何度もさせているのを朝ちらりと見ていた。その爆発は今や微々たるもので。

「え、爆豪なんそれ」
「知らねェ!いきなり切られたからむかついてやり返そうとしたらこうなってんだよ!てめぇ俺に何しやがった!!」
「うっわ、線香花火じゃん」

そうなのだ。彼のあの大きな爆発は耳郎ちゃんが言うとおり今や線香花火のようにぱちぱちとした小さい爆発になっていた。みんなも思い思いに個性を出現させるが、弱くなったと口々に言い始めた。
 
「名前君、きみまさか」
「…っ、」

飯田くん、と声を出そうとしたのにかすれた情けないものしか出なかった。彼も緑谷くんと同じように知っているのだ。言わなくちゃいけない。

「私は、ほんとは……っ赤黒名前で、………ステインの、ヒーロー殺しの妹です」

その言葉に皆がごくり息を呑むのが分かった。じゃり、と誰かが足音を鳴らす。攻撃態勢なのか、戦いたのかは分からない。あぁ、ほんと短い夢だったな。もう、なんでこうなるかな。泣きたいのに涙が出ない。それなのに口は止まらなくて。

「個性は、血とか口に含んだ相手の個性を、コントロールして……例えば、今の皆みたいに……個性を弱らせることもできて、ほら、ステインと似てるでしょう……?」

もういやだ。ステインから逃げたいのに、私個性は梅雨ちゃんの言うとおりステインと似ていて、生きてる限り逃げられないと思わされた。皆の顔にはうっすらと傷が浮かんでいて、私がやったのだということをありありと見せつけた。

それからのことはあまり覚えていなくて、みんなが引き止める中逃げることしかできなかった。でもどこに行っても居場所はなくて、広い雄英のどこだか分からない道端のベンチに腰掛けてから、ようやくいつかみたいにぽろぽろと涙があふれた。



        main   

ALICE+