「君は綺麗な映画が好きな人だと思うから」


私は映画をあまり観ない。
人から勧められて観た映画が数本あって、わたしはそのどれもが大好きだと思うし、そのどれのことも最初から最後まではあまり覚えてはいないとも思う。

心に残ったシーンやセリフがあって、そういう物語はいつも私の心を揺らして、遠くの場所に連れてきては、最後は置き去りにしていく。

映画を見ると、ドラマを見ると、本を読むと、漫画を読むと、私はいつも、その世界の中へ飛んでいって、その世界のキャラクターたちと笑って、泣いて、叫んで、同じ時間を共にして、そうして過ごしているといつの間にか物語が終わってしまい、残るのはただただどうしようもない現実にいる自分だけだった。







映画を人生だと私に言った人がいた。

「君は綺麗な映画が好きだと思うから」
だからこういうのは好きではないかもしれないけど、人生は映画ではないからね、と言う私に、彼は
「映画は人生を時間の都合上切り取ったものです。」「俺は蛇足が嫌いなわけではないですよ。」「こういう蛇足は好きです。」と続けた。ことがあった。







綺麗な映画が好きだったのは私だったのかもしれないな、と思う。

映画のように美しい物語の中で綺麗に終われるほど、私たちの生きている現実は美しくもなく、単純明快でもない。答えの出ないことが日々複雑に捻じ曲がって、それがさらに揺れてぐちゃぐちゃになっていくのだということを、今までもそうでこれからもそうだいうことを、長い時間をかけて私は知ってしまったのだ。







人生には愛しいと思える瞬間がいくつもあって、そのいくつもの瞬間はもう返ってこないということを、取り返しがつかなくなってから私は理解しました。

夏の海で、あなたと波の音を聴きながら貝殻集め大会を開いたこと。冬の日にプラネタリウムみたいな星空を家から眺めたこと。あなたが灯したランタンの光が、あなたみたいに暖かかったこと。あなたに抱きしめられるとあったかくて安心すると言うと、「俺はあなた専用のホッカイロだからね」とあなたが答えてくれたこと。あなたが私に人と穏やかに話す方法を教えたくれたこと。あなたの大きくて暖かくて少し湿っている、太陽みたいな手が、本当に本当に大好きだったこと。私のことを、あなたが世界で初めて大好きになってくれたこと。







きっとずっと、ずっとこの頃のあなたが、私の中で生き続けていく。

どうか、どうか、お元気で。
続きを読む>>


🧠 🖋️

ALICE+