◆ 溺愛chocolate


「なまえ、此れ今日のお八つにしよう!」

探偵社の扉を勢い良く開け放し、可愛らしくお八つなどと言っているのは江戸川乱歩(26)。
乱歩が買ってきた「此れ」とは大量の猪口冷糖。

「乱歩、おかえりなさい。食べる前にちゃんと、うがい・手洗いしなさいね。」

乱歩を呼び捨てにしているのは、探偵社事務員のなまえ。
二人は恋仲で、乱歩はなまえを溺愛している。
探偵社において乱歩を呼び捨てにし、指図出来るのは屹度、社長となまえだけだろう。

ソファに座り、丁度休憩中だったなまえにスタスタと歩み寄り、隣に座る乱歩。

「はいはーい。そんなことより、此れ!美味しそうでしょう。なまえと食べようと思っていっぱい買ってきた。」

「人の話聞いてないでしょ。此れって、私は…」

何故か猪口冷糖を見て口籠るなまえ。
乱歩は心配そうになまえの顔を覗き込む。

「如何かした?」

なまえは乱歩から思いっきり顔を背けてから言った。

「実は私…」

「…成る程ね。」

なまえが返答するより早く、乱歩は名探偵らしく推理をし、何か解った様子。

「か、勝手に、超推理しないでよっ」

「なまえが考えてる事なんて、僕の異能力・超推理を使うまでも無く推理出来たよ。」

推理され赤面するなまえに、両手を広げ大袈裟に溜め息を吐いた乱歩。
やれやれと言い乍ら続けた。

「減量なんて、必要ないよ?なまえ。」

「ぐっ…」

核心を突かれ、言い返せないなまえ。

暫くの間。

なまえは俯き、赤面し乍ら小刻みに震えている。
乱歩は愛しい恋人の愛らしい姿ににやにやしつつ、なまえの髪先を弄り次の言葉を待つ。

「わ、私…」

「ふむ。」

「私、本気なの!第一、乱歩が細いのがいけないんだからねっ!」

相変わらず赤面状態で、僅かな怒りを含んだなまえの表情が、乱歩の悪戯心に火を付けた。

「ふーん。じゃあなまえはこの猪口冷糖は食べないって事?」

「うん。」

「なまえと一緒に食べたくて、態々僕が買って来たのに?」

「うっ…ごめん。」

「もう怒った!そんななまえにはこうだ!」

乱歩はそう言うと、いきなり自分だけ猪口冷糖を頬張り始めた。

なまえは乱歩が一体何をしたいのかさっぱり理解出来なかったが、彼の様に推理出来る訳も無く、唯黙って見ていた。

すると乱歩は猪口冷糖を食べるのをピタリと止め、なまえの肩を確りと掴み口付けをした。

「んっ…ふ、ぅ…」

然し、其の口付けは唯の口付けではなかった。
乱歩は口移しでなまえに猪口冷糖を食べさせたのだ。
其の後、なまえが飲み込んだのを確認すると、乱歩はなまえの唇を開放してやった。

「如何?美味しかったでしょ。」

乱歩はすっかり満足した模様。
なまえはというと、先より赤面している。
乱歩はにっこり微笑んでから再び口付けを落とした。

今度は軽く触れるだけの、優しい口付け。

其れから耳元で乱歩が囁く。

「僕はどんななまえも大好きだよ。」

「…莫迦。」

二人の愛は、猪口冷糖よりも甘いのでした。




2017.03.19*ruka


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*confeito*